10年ぶりの英国で感じた“浦島太郎”気分:変わりゆく時代と文化のギャップに驚いた1週間

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8月初旬、久しぶりに国際学会参加のため1週間ほど英国を訪れました。1980年代と90年代、それぞれ1年間住んだ経験がありますが、最後に訪れたのは約10年前。それから10年ぶりに再び足を踏み入れると、すっかり様変わりした英国に驚き、まるで浦島太郎になった気分を味わいました。

まず戸惑ったのは古いポンド紙幣が使えないこと。タクシーに乗り、現金で支払おうとすると「そんな古いお札は使えない」と言われ、あきれ顔でカード払いに切り替えるよう促されました。ところが、カードをかざしてもなかなか決済できず、ドライバーには「偽造カードでは?」とまで疑われる始末。暗証番号を入力する方法で何とか支払いを済ませましたが、最初からそう言ってくれればと感じました。

また、ロンドンの地下鉄も以前とは大きく変わり、慣れ親しんだ感覚は遠い昔のこと。かつて使っていた地下鉄カードの残高がほとんどなくなっていたため、夫が数年前に使ったカードで乗車しましたが、問題なく使えたときはほっとしました。そして、目的地であるダラムまでの列車を予約するのにも一苦労。スマホでようやく席を確保できた後、ホテルで買った缶ビールを飲みながら一息つきましたが、ここでも現金は一切使えずカード決済のみ。最近の英国では、ほとんど現金を使わない生活が当たり前のようです。

ダラムへ向かう列車は、日本で言う新幹線のような幹線列車ですが、運行状況はまるで違います。1時間に2~3本しかなく、頻繁に遅延やキャンセルが発生。「スタッフ不足」や「車両の電気系統故障」などが理由で運行中止になることも多いようです。それでも無事に乗車でき、予約した席に座ってほっとしたのも束の間、車内は騒然としていました。誰もが携帯を操作し、大声で会話をする人、音を出して動画を楽しむ人、ゲームの効果音を響かせる人などが入り乱れ、子どもたちの歓声も響き渡ります。日本のように「携帯での通話はお控えください」といった静けさを重視する空気は皆無でした。

学会では旧友と再会し、楽しいひとときを過ごしましたが、宿泊した大学の寮では久しぶりに「英国の洗礼」を受けました。一人部屋だったのは快適でしたが、シャワーから出るのはほとんど水に近いぬるま湯。それでも誰も文句を言わないのは英国ならではなのでしょうか。朝食は典型的な英国式で、卵やソーセージが美味しく、ほっとしました。

帰りの列車でも予想外の出来事が続きます。予約した席には若い男性が座っており、イヤホンをつけて熟睡中。混雑する通路をかき分けて席までたどり着き、予約画面を見せると、彼はすぐに席を譲り、さらに荷物を網棚に上げてくれました。この素直さには少し感心しましたが、そもそも改札がフリーで機能していないため、ほとんどの乗客が席を予約しておらず、乗車時には「満員なのでこれ以上乗ると危険」とのアナウンスが流れるものの、誰も降りないというカオスな状況でした。

今回の訪英で、日本がいかに便利で整然とした国かを改めて実感しました。しかし、英国が劣っているわけではなく、文化の違いや時代の変化を強く感じた1週間でした。混乱もありましたが、それ以上に新たな気づきと学びを得る旅となりました。

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