ドイツ東部で極右政党が歴史的勝利、中間評価となったショルツ政権の危機感

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旧東ドイツ地域に属するザクセン州とチューリンゲン州で行われた州議会選挙で、ショルツ首相が率いる中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が大敗を喫しました。一方で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がチューリンゲン州で初めて第1党に躍り出るという歴史的な結果となり、国内外に衝撃を与えています。極右勢力が州議会レベルで第1党となるのは、戦後ドイツでは初の出来事です。

今回の選挙結果を見ると、SPDはチューリンゲン州でわずか6.1%と、前回選挙からさらに2.1ポイントを失い、支持率は低迷しました。また、連立政権を組む環境政党「緑の党」と自由民主党(FDP)も大きく支持を落とし、それぞれ3.2%と1.1%にとどまりました。一方で、反移民を掲げて急速に支持を拡大しているAfDは、9.4ポイント増の32.8%という大幅な伸びを記録し、国政最大野党の中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」を上回りました。CDUも23.6%と支持をやや伸ばしたものの、AfDの勢いには及びませんでした。

ザクセン州でもCDUが31.9%で第1党の座を守ったものの、AfDは30.6%と僅差に迫っています。SPDは7.3%と引き続き低調で、緑の党やFDPも支持を減らしました。この結果は、2021年12月に発足したショルツ政権に対する中間評価とも言え、ドイツ国内で広がる政権不満が顕在化した形です。多くの移民流入や景気の不透明感を背景に、既存政党が有権者の声に応え切れていない現状が浮き彫りになっています。

さらに注目すべきは、今年1月に設立されたばかりの左派新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」が、両州で10%以上の支持を獲得した点です。この新党は、SPDよりも高い支持を集め、既存政党の弱体化を一層際立たせています。今月22日に予定されている東部ブランデンブルク州の州議会選挙でも、AfDが第1党となる可能性が高まっており、ドイツ政治における極右勢力の影響力拡大が続く見通しです。

この結果について有権者からは、「移民政策や経済政策に対する不満が爆発した結果だ」「既存政党は市民の声を軽視しすぎている」といった声が多く聞かれます。一方で、極右勢力の台頭に対して「戦後ドイツが築いてきた民主主義の危機だ」と懸念する声も根強く、今後の政局に大きな波紋を広げることは避けられないでしょう。

ドイツに限らず欧州各国でも同様に、移民問題や経済の停滞を背景に極右や新興勢力が台頭しています。今回の選挙結果は、既存政党がこれらの課題にどれだけ迅速かつ適切に対応できるかを問う試金石となるはずです。次の選挙で既存勢力が巻き返せるか、それとも新たな勢力がさらなる支持を集めるのか、国際社会の注目が集まっています。

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