カマラ・ハリスの濃紺スーツに込められた政治的メッセージ──ファッションが語る「上品さと威厳」

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米民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領が、8月22日の指名受諾演説で着用した濃紺のスーツが話題を呼んでいます。米メディアでは、このファッションに込められた政治的メッセージについて多くの論評が行われています。特に、女性政治家が服装を戦略的に活用してきた背景を考えると、ハリス氏の選択にも深い意図があったといえるでしょう。

ハリス氏が選んだのは、フランスの高級ブランド「クロエ」の特注パンツスーツです。さらに、同系色で「プッシーボウ」と呼ばれる大きなリボンがついたブラウスを合わせていました。このプッシーボウは1960〜70年代に社会進出を果たした女性たちがネクタイ代わりに着用し、英国初の女性首相マーガレット・サッチャー氏も好んで着ていたことで知られています。当時、女性たちは男性中心の社会で自らの存在感を示すためにこうしたファッションを用いており、ハリス氏もその流れを汲んでいるといえます。

興味深いのは、演説会場に集まった代議員や演壇に立った多くの女性たちが白い服を着ていた点です。白は女性参政権運動の象徴であり、女性の政治的権利獲得を祝福する色とされています。2016年の大統領選で民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官も指名受諾演説で白のパンツスーツを着用しましたし、1972年に黒人女性初の下院議員で大統領候補指名を目指したシャーリー・チザム氏も選挙勝利演説で白い服を選んでいます。

その流れを踏まえると、ハリス氏があえて白ではなく濃紺を選んだ理由が浮かび上がってきます。それは「女性初」を過度に強調せず、より広範な層の支持を得るための戦略だったと考えられます。女性誌「マリ・クレール」に寄稿したファッションライター、ケルシー・スティーグマン氏は濃紺について、「上品さと威厳、知性を象徴し、権力を持つ人々が好む色」と説明しています。この解説からもわかるように、ハリス氏は単にジェンダーの象徴として女性を鼓舞するだけでなく、権威あるリーダー像を提示する狙いがあったのでしょう。

一方、一般の声を拾うと「女性としての地位向上を示しながらも、誰もが共感できる落ち着いたスタイルだ」という肯定的な意見が目立ちます。また、「白を選ばなかったことで新たなリーダー像を示しつつ、女性参政権運動の歴史を否定しない絶妙なバランスを感じた」との評価も見られます。

今回の濃紺スーツは、ただの服装ではなく、女性リーダーとしての立場を象徴する力強いメッセージそのものでした。ハリス氏が示したのは、女性の権利を踏まえつつ、全世代・全性別からの支持を目指す新しい政治スタイルです。ファッションを通じて訴えるメッセージの奥深さに、これからも注目が集まるでしょう。

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