「複利」という言葉を投資の勉強でよく耳にするものの、その真価を実感している人は意外と少ないかもしれません。一見すると単なる利子の積み重ねに思えますが、実際には時間の経過とともにお金が加速度的に増える効果をもたらす重要な考え方です。「利子が利子を生む」という原理で、元本に利子が加わり、その合計額にさらに利子がつくため、最終的な増加幅が驚くほど大きくなります。この現象は「雪だるま式」とも言われ、小さな雪玉が転がるごとに雪をまとい、次第に大きくなる様子に似ています。
例えば、手元の100万円を毎年2%の利率で運用した場合、50年後には269万円になりますが、利率が5%なら1146万円、10%ならなんと1億1739万円に達します。さらに100年後の数字は驚異的で、それぞれ724万円、1億3150万円、そして137億円を超える結果となります。このように、利率の違いが長期的には非常に大きな差を生み出すのです。
著名な投資家ウォーレン・バフェット氏もこの複利効果を最大限に活用して資産を築きました。彼は長期間にわたって高い資本効率を維持できる企業に投資することで、時間を味方につけました。バフェット氏が経営権を握ったバークシャー・ハザウェイはその後、優良企業への投資を続け、現在では時価総額が1兆ドルを超える巨大企業に成長しています。これは特別な話に思えるかもしれませんが、政府が資産運用を国の重要課題と位置づける背景にも、こうした長期的視点があるのです。
複利効果を理解するには、実際に計算してみることが効果的です。パソコンの表計算ソフトを使えば簡単に試せますし、「72の法則」という便利な計算方法もあります。この法則では、元本が倍になる年数をおおまかに求めることができます。例えば、利率2%なら72÷2=36年、利率8%なら72÷8=9年で倍になるといった具合です。
また、複利はお金だけに限らず、知識や経験にも応用できます。バフェット氏の参謀であるチャーリー・マンガー氏は「知識にも複利効果がある」と語っています。長年積み重ねた知識は次第に相乗効果を発揮し、より良い判断を可能にします。この考え方は投資に限らず、健康管理や語学習得、筋力トレーニングといった日々の習慣にも応用でき、「継続は力なり」をまさに体現しています。
複利効果を正しく理解し、小さな努力を積み重ねることで大きな成果が得られることを心に留めておきたいものです。短期的な成果に惑わされず、長期的な視点で積み上げることこそが、資産運用や自己成長における成功の秘訣でしょう。