アルミ付き紙容器のリサイクルが進化──埋もれた資源を『都市森林』へ活用する新たな挑戦

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豆乳や野菜飲料、スープなどの飲料に使われるアルミ付き紙容器のリサイクルが徐々に広がりを見せています。一見すると牛乳パックと変わらないこの容器ですが、内側にアルミ箔が使われていることが障壁となり、多くの地域でリサイクルの対象から外され、焼却処分されてきました。しかし、新しい技術が開発されたことで再生紙製品へのリサイクルが可能となり、企業や自治体を巻き込んだ本格的な回収が始まっています。

一般的な牛乳パックは紙とポリエチレンを張り合わせた構造で、回収後に分離処理を行い、トイレットペーパーなどに再生されています。一方、アルミ付き紙容器は光や酸素を遮断するアルミ箔が内側に張られているため、未開封なら常温で長期間保存できるというメリットがあります。しかし、アルミ成分を含むため従来の再生設備では対応が難しく、資源回収の対象外とされるケースが多かったのです。

この課題を解決するため、製紙大手の王子ホールディングスと紙容器メーカーの日本テトラパックが共同でリサイクル技術を開発しました。王子は特別な設備を導入し、アルミ成分を効率的に除去する技術を確立。現在、関西地区の工場でアルミ付き紙容器を受け入れ、段ボールの原料として再利用しています。

さらに、日本テトラパックはスーパーや公共施設に回収箱を設置し、回収を促進しています。現在までにイオンやライフコーポレーションなど全国377カ所に回収箱が設置されており、年末までに450カ所へと増設する見通しです。ただし、容器を開いて洗い、乾かしてから回収箱に入れるという手間がかかるため、買い物客に協力を求める工夫も始まっています。

中部や北陸を中心に展開する食品スーパー、バローホールディングスは、回収量に応じて地域の子ども食堂に寄付を行う仕組みを導入しました。1リットル入りアルミ付き紙容器1枚につき1円を寄付するというもので、試行的に行った岐阜県内の3店舗では2カ月間で約700枚が集まりました。この回収はグループのトラックが商品の配送後に行うため効率的で、今後は岐阜県内全店舗および名古屋市内の店舗にも拡大する予定です。

現在、日本国内で家庭から排出される紙製容器包装は年間約65万トンにも達しますが、そのうち回収されて資源として再利用されているのはわずか2割強に過ぎません。メーカーや再生事業者で構成される紙製容器包装リサイクル推進協議会は、自治体に対し幅広い紙資源の回収を呼びかけており、今回のアルミ付き紙容器の回収はその試金石とされています。

資源として再生可能な紙製容器は「都市森林」とも言える貴重な存在です。埋もれた資源を活用し、再生紙の原料として循環させる動きが加速することで、より持続可能な社会の実現に近づくでしょう。

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