アルメニアのニコル・パシニャン首相は8月31日、首都エレバンで行われた記者会見で、長年対立している隣国アゼルバイジャンに対し、係争地ナゴルノカラバフを巡る平和条約への署名と批准を要請したことを明らかにしました。しかし、この提案に対しアゼルバイジャン側は即座に拒否したと伝えられています。インタファクス通信などの報道によると、和平に向けた動きは一進一退を繰り返しているようです。
パシニャン首相は、両国間の和平合意について「17の条項のうち、序文と13の条項で完全な合意に至り、3つの条項で部分的に合意した」と述べました。さらに、残る1つの条項についても「ほぼ合意に達している」とし、和平への道筋はかなり近づいているとの見解を示しています。それにもかかわらず、アゼルバイジャン側が拒否する姿勢を見せたことで、事態は再び暗礁に乗り上げた形です。
ナゴルノカラバフを巡る両国の対立は旧ソ連時代から続く長い歴史を持ち、これまでにも幾度となく戦闘が勃発してきました。直近では2020年に大規模な紛争が発生し、多くの犠牲者を出しました。この紛争はアゼルバイジャンの勝利で終結しましたが、その後の和平交渉は難航しているのが現状です。
今回の和平提案に対するアゼルバイジャンの拒否について、専門家の間では「領土問題に対する両国の根深い対立が原因」と指摘されています。一方で一般市民からは、「もうこれ以上の戦争は望まない」「和平への道を何とか模索してほしい」という声も多く聞かれます。両国の国民にとっても、この長引く紛争は経済や生活に深刻な影響を及ぼしており、一刻も早い解決を願う人々が少なくありません。
和平へのハードルが高い一因には、ナゴルノカラバフに住む住民の帰属意識や民族的なアイデンティティの問題もあります。アゼルバイジャンは同地域を自国領と主張していますが、アルメニア系住民が多く暮らしており、アルメニア側は彼らの権利を守る必要があると訴えています。
国際社会からも、この地域の安定化を求める声が高まっており、欧米諸国やロシアなども両国に対して対話を継続するよう働きかけています。しかし、今回のアゼルバイジャンの拒否によって、和平への道は再び遠のいた印象を与えています。
平和条約の合意が実現するには、双方の妥協と信頼構築が不可欠です。パシニャン首相が示した前向きな姿勢が、この対立に新たな局面をもたらすのか、それとも更なる対立の火種になるのか、今後の展開が注目されます。