2019年6月4日、中国で発生した天安門事件から30年という節目の日を迎え、米国のマイク・ポンペオ国務長官は、中国共産党体制に対する極めて厳しい批判声明を発表しました。この事件は、1989年6月4日に、民主化を求める学生や市民の運動に対し、中国政府が武力を行使して鎮圧した出来事(事件の具体的な背景や経緯については、ここでは深く触れません)として知られており、国際社会からも長きにわたり注目され続けている問題でございます。
ポンペオ長官は声明の中で、「中国の一党体制は異論を受け入れることがなく、自らの利益に合致すると判断すれば、いつでも人権を侵害する」と断じ、中国共産党の統治手法を痛烈に非難しました。この「一党体制」とは、一つの政党、すなわち中国共産党のみが国家権力を独占的に握り、他の政党や意見の存在を事実上認めない政治システムのことで、ポンペオ長官はこの点が、自由で開かれた社会への障害となっていると指摘しているのです。
さらに長官は、「中国を国際システムに組み込めば、いずれより開かれた寛容な社会へ変わるだろうという国際的な期待」があったものの、「その希望は打ち砕かれた」とも表明しています。この「国際システム」とは、国際連合や世界貿易機関(WTO)など、世界各国の間で共有されるルールや規範、制度の枠組みを指す専門用語で、かつて欧米諸国は中国の経済発展を通じて政治的な自由化も進むと期待していました。しかし、今回の発言は、その期待が裏切られたというトランプ政権の強い認識を示すものでしょう。
ポンペオ長官による今回の声明は、前年の2018年に発表された声明が、中国に対し人権尊重を促す穏当な表現に留まっていたのに比べ、その批判のトーンを格段に強めているのが特徴です。これは、ドナルド・トランプ米政権が、貿易問題をはじめとする様々な分野で中国に対して強硬な姿勢を打ち出している現状を色濃く反映していると拝察します。米中間の対立が激化する中で、米国が人権問題、そして体制そのものにまで踏み込んだ批判を展開したことは、両国の関係に新たな火種を投じる可能性があります。
これに対し、在米中国大使館は2019年6月4日、ポンペオ長官の声明を「偏見と傲慢に基づいたものだ」と即座に反論する声明を発表しました。「中国の内政干渉であり、中国人に対する侮辱」であると強く非難したうえで、「強烈な不満と断固とした反対を表明する」と主張しています。ここでいう「内政干渉」とは、他国の政治や行政など、内部の事柄に干渉することを指し、中国側は米国による今回の批判が、自国の主権を侵害する行為であると捉えていることが伺えます。
この一連の動きに対し、SNS上では即座に大きな反響が巻き起こりました。米国務長官の強い姿勢を「当然の批判だ」「人権と自由のために発言してくれた」と支持する意見がある一方で、「米中貿易戦争の延長線上にあり、政治的な駆け引きに過ぎない」「他国の内政に口を出すのは行き過ぎだ」といった批判的な意見も見受けられます。特に、天安門事件の事実そのものに対する議論の再燃を期待する声も多く、国際的な関心の高まりを改めて浮き彫りにしていると言えるでしょう。
私見を述べさせていただきますと、一国の民主化を望む市民を武力で抑圧した行為に対し、国際社会が沈黙することは決してあってはならないと考えます。ポンペオ長官による体制批判は、確かにトランプ政権の対中強硬路線の一環という側面はあるでしょう。しかし、自由や民主主義といった普遍的な価値観に基づき、中国共産党の「異論を認めない」統治姿勢へ警鐘を鳴らすことは、国際的な責務のひとつであると私は認識しています。今回の米国の動きが、中国国内の言論の自由や人権状況に建設的な変化をもたらすきっかけとなることを、心から願うばかりです。