2019年6月4日午前の債券市場で、日本の長期金利が約2年10カ月ぶりとなる異例の低水準を記録いたしました。長期金利とは、住宅ローンや企業の借入金利などの目安となる、償還期間が10年の国債の利回りのことです。この日の指標となる新発10年物国債の利回りは、一時マイナス0.105%にまで低下しました。金利がマイナスになるということは、国にお金を貸す側(国債を買う投資家)が、満期時にお金が減ってもよいと考えるほど、安全資産である国債への需要が高まっていることを示しています。
この長期金利の低下に連動し、同日の東京外国為替市場では円相場が急激に上昇する動きを見せました。一時、1ドル=107円台まで円高が進行し、これは約5カ月ぶりの水準となります。一般的に、長期金利が下がると、その国の通貨の魅力が薄れて円安になりやすいとされていますが、今回は世界経済の不確実性から「安全資産」としての円が買われる、という特殊な状況が起きているのでしょう。
この長期金利の急激な低下の背景には、専門家も指摘する複数の要因が絡み合っています。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊氏は、「貿易摩擦の再燃」と「米国を含む世界的な金利低下」の二つを大きな要因として挙げています。特に米中間の貿易摩擦は、世界経済の先行きに対する強い懸念を生み出しており、投資家がリスクの高い株式などから資金を引き揚げ、日本の国債のような安全性が高いとされる資産に資金を振り向けている状況です。
また、この動きは日本固有のものではありません。米国をはじめとする世界各国でも金利の低下が進んでおり、日本もその世界的な金融緩和の波に巻き込まれていると言えるでしょう。世界経済の減速懸念が強まる中で、各国の中央銀行が利下げや金融緩和を示唆していることも、長期金利の低下に拍車をかけている状況です。
SNS上でもこのニュースに対する反響は大きく、「またマイナス金利に戻るなんて、景気の先行きが本当に心配になる」「円高は海外旅行には嬉しいけど、株価や経済への影響が怖い」といった不安の声が多く見受けられます。安全資産とされる国債に資金が集中していることは、裏を返せば、市場が将来的なリスクを強く警戒している証拠であると私は考えます。私たち編集部の見解としても、この長期金利の動向は、単なる金融市場の話題にとどまらず、今後の日本経済、ひいては世界経済の行方を占う重要なシグナルとして、引き続き注目していく必要があるでしょう。