長年住み続けてきた都心の住宅地も、30年の時を経て随分と様変わりしました。当初この地に住み始めた理由は、意外にも家賃が手頃だったからです。当時は古い物件が多く、街には下町情緒が色濃く残っていて、雪で電車が止まるとご近所で急遽マージャン大会が開かれるような和やかな雰囲気がありました。しかし、ここ10年ほどの間に、新築マンションが次々と建設され、数億円規模の物件に新しい住人が移り住んできたことで、昔からの住民との間に少しずつ距離が生まれ始めたのです。
新住民と旧住民の間で感じる生活の違いは明確です。例えば、自分が堅焼きせんべいをバリバリと噛みながら徹夜で仕事をしている時に、隣の高級マンションのペントハウスでシャンパン片手にジャグジーを楽しむカップルを見かけたら、やはり面白くない気分になるものです。もっとも、そうした空想で愚痴をこぼす旧住民側のひがみも、きっと新住民からすれば嫌われポイントなのでしょう。
さて、最近街中でもよく見かける「パワーファミリー」という言葉をご存じでしょうか?以前紹介された「パワーカップル」は高収入の夫婦を指す言葉でしたが、「パワーファミリー」は同じく高収入ながら子供を持つ家庭を指します。世帯年収1500万円前後が多く、夫婦だけではなく子供にも惜しみなくお金を使う姿勢が特徴です。むしろ消費意欲の高さではパワーカップルを上回り、注目される存在となっています。
スマートバンクが実施した調査によると、世帯年収1400万円以上のパワーファミリーは「使うところには思い切り使い、節約するところは徹底して節約する」というメリハリの効いた消費スタイルが特徴です。特に旅⾏、趣味、食品への支出を惜しまない一方で、生活用品やインテリアには控えめです。また、約9割が証券口座を保有し、7割がNISAを活用して毎月5万円以上の積立投資を行っているという今どきの資産運用スタイルも興味深い点です。
貯蓄額は多様で、半数が1000万円以上を持つ一方で、20%ほどは100万~500万円という家庭も見られます。派手な消費と資産運用を両立させていることが、彼らの存在感を際立たせているのでしょう。今年、有名私立小学校に子供を入学させた友人によると、母親たちは毎回異なる高級ブランドのバッグを持ち歩いているそうです。そのバッグの価格は300万〜400万円が当たり前だとか。「どうすればそんなに稼げるの?」と、ため息交じりに語る友人の声には、羨望と驚きが入り混じっていました。
一方で、そんな贅沢をよそ目にせんべいをかじりながら仕事に没頭する自分の現実を思うと、少し肩を落とさざるを得ません。それでも、古き良き下町の空気を感じつつ、この街での日常をこれからも大切にしていきたいと感じるのです。