🇮🇹イタリア「ポピュリズム政権」1年の光と影:極右「同盟」の躍進と3.6兆円減税の衝撃!迫るEUとの財政バトル

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2019年6月4日、イタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)を掲げる連立政権が発足から約1年を迎えました。連立を組む極右政党の「同盟」が、地中海を渡る移民流入を約9割も減少させるという公約を実現し、国民からの人気を確固たるものにしています。これは、従来の政治に不満を持つ層の期待を一身に集めた結果と言えるでしょう。実際に、2019年1月から5月末までにイタリアへ流入した移民の数は、政権発足前の前年同期と比較して大幅な減少を見せていると、国際移住機関(IOM)のデータが示しています。

しかし、この政権の船出は順風満帆とは言えず、最大の課題である経済再生は袋小路に陥っています。2018年7月から9月期以降、2四半期連続でマイナス成長を記録するなど、イタリア経済の低迷は顕著です。失業率も10%を超える高水準で推移しており、多くの国民の生活実感として「景気が良くなった」とは言い難い状況が続いています。ナポリでIT企業に勤めるアランさん(36歳)のように、「最初は期待したが、蓋を開けたら生活は何も良くならない」と不満の声を上げる市民も徐々に増えているようです。

🇮🇹極右「同盟」の人気沸騰と大型減税の公約

経済低迷という逆風にもかかわらず、「同盟」を率いるサルビーニ副首相は、2019年5月の欧州議会選での躍進を追い風に、強気な姿勢を見せています。彼は景気浮揚のため、家庭向けに300億ユーロ(約3.6兆円)規模の大型減税の断行に意欲を示しており、「前向きな財政ショックが必要だ」と主張しています。これは、支持層のさらなる拡大を狙う、非常に魅力的な政策提言でしょう。「同盟」は、欧州議会選で連立パートナーであるポピュリズム政党「五つ星運動」を抜き去り、国内第1党に躍り出ました。一方の「五つ星運動」は第3党に沈んでおり、連立政権内での「同盟」の影響力が一層拡大しています。

この人気の源泉は、ひとえに**「移民削減」という分かりやすい成果によるものだと分析できます。連立政権は、景気浮揚策にも余念がありません。2019年4月からは、求職中の低所得者層に対し最低所得保障**(いわゆるベーシックインカム)として、最大で月780ユーロ(約10万円)を支給する制度を始めています。ベーシックインカムとは、すべての人に生活に最低限必要な額を政府が無条件で定期的に支給するという考え方で、これにより消費を促し、経済を活性化させる狙いがあります。しかし、この種の財政出動は、イタリアが抱える巨額債務という**「財政リスク」に直結します。

🇪🇺EUとの「財政規律」を巡る再燃する対立

イタリアの景気対策は、財政悪化への懸念と表裏一体です。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、2019年5月7日、イタリアの財政赤字が2020年には国内総生産(GDP)比で3.5%に達する恐れがあると指摘しました。これは、EUが加盟国に課している「財政赤字をGDP比3%以下に抑える」という財政規律ルールに違反する水準です。イタリアはユーロ圏第3位の経済大国であり、その放漫財政**(計画性のない過度な財政支出)を放置すれば、ユーロ圏全体の経済に深刻な影響を及ぼすリスクが高いのです。

イタリア政権と欧州委員会は、2018年秋にも、予算案を巡って激しく対立した経緯があります。前政権がEUと合意していた2019年予算の財政赤字目標(GDP比0.8%)に対し、新政権は当初、その3倍にあたる2.4%を盛り込んだ予算案を提出しました。欧州委員会が制裁も視野に入れて赤字圧縮を強く求め、最終的には約2%に下げることで決着しましたが、これは一時的な休戦に過ぎませんでした。2019年春以降、伊政権が再び財政出動拡大の姿勢を強めているため、両者の対立が激化する公算は大きいと言えるでしょう。欧州委員会は2019年6月5日にもイタリアの財政を評価する予定で、このままでは是正勧告が出され、従わなければ制裁手続きが発動される可能性もあります。

🚨「イタリアショック」への警戒とポピュリズムの策略

私が編集者として注目するのは、伊政権がこのEUとの対立をむしろ歓迎しているフシがある点です。経済停滞の責任をEUの厳しい財政ルールに押し付けることで、国民の不満をEUに向けさせ、自身の支持率を維持しようというポピュリズム特有の戦略が見て取れます。サルビーニ氏は「(EU財政ルールは)欧州に飢餓をもたらしている。見直しへ全力で闘う」と強く訴えており、国民のナショナリズムを刺激しています。

しかし、EUとの交渉で成果が出なければ、その批判の矛先はいずれ政権自身に向かうでしょう。さらに、金融市場もこの状況を警戒しています。2019年5月31日時点のイタリアの10年物国債利回りは2.7%前後で、4月以降、じりじりと上昇傾向にあります。これは、イタリアの財政に対する信用の低下を示す兆候であり、「イタリアショック」と呼ばれる金融市場の混乱を再び招くのではないかという警戒感が静かに広がっています。このイタリアのポピュリズム政権が、今後もEUや金融市場を揺さぶり続ける欧州の波乱要因となることは間違いないでしょう。

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