2024年の現在、日本の大学に所属する研究者たちが本来の職務である研究に十分な時間を確保できないという深刻な問題が浮き彫りになっています。今年夏、文部科学省が発表した最新の調査によれば、研究者が職務時間の中で研究に費やす割合はわずか32%で、20年前と比べて14ポイントも減少しました。これは、研究者たちが職務の3分の2を教育や試験監督、さらには社会貢献活動といった研究以外の業務に費やしていることを示しています。
特に医学部に所属する若手医師や助教は、診療業務も加わり状況はさらに深刻です。調査では、研究時間がゼロというケースが約15%、週に1~5時間しか研究に充てられない人が半数を占めています。2024年に予定されている働き方改革で医師の残業規制が強化されることから、日本の医学研究がさらに縮小するのではないかとの懸念も広がっています。
日本の大学、とりわけ国立大学は、研究開発の中心的な役割を担っています。しかし、資金不足だけでなく、研究に専念する時間が足りないことが、科学技術力の低下を招いていることは否定できません。この現状を打開するためには、大学の組織運営と研究者の働き方に抜本的な改革が必要です。たとえば、教授が研究室で圧倒的な権限を持つ「講座制」を見直し、准教授や助教を主任研究者(PI)として積極的に登用する仕組みを導入するべきです。
さらに、研究者が獲得した研究費を使い、教育業務を代行する人材を雇う「バイアウト制度」の普及が欠かせません。この制度を活用すれば、研究者が研究に集中しやすい環境を整えることができます。また、大学本部が研究開発を組織的にマネジメントし、実験を支援する専門スタッフや事務職員を増員することも重要です。
現在、国から大学に配られる運営費交付金は減少する一方、研究費としての競争的資金が増えています。しかし、この資金を獲得するための申請書や評価書類の作成が研究者たちの大きな負担となっており、特に紙ベースの業務が時間を奪っています。国が率先してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、研究者の負担を軽減する必要があります。
文部科学省は、2040年までに博士号取得者を現在の3倍に増やす目標を掲げています。高度な研究人材の拡充は妥当な政策ですが、単に数を増やすだけでは不十分です。若手研究者が独立して活躍できる環境を整え、早期からキャリアを積むチャンスを提供することが求められます。
SNSでは「研究に専念できない構造を変えるべき」「人材を増やすだけでなく、実際の環境整備が必要」といった意見が数多く見られます。日本の科学技術力を再び世界の舞台で輝かせるためには、研究者が本来の役割に集中できる仕組み作りが急務です。国と大学が一体となり、研究の質を高める環境を実現することが期待されています。