2024年現在、政府や与党で全国一律の通信ユニバーサルサービスを見直す議論が進んでいます。人口減少が加速する中で、良質かつ低コストな通信網を国土の隅々まで維持するのは一筋縄ではいきません。この課題を乗り越えるには、衛星通信など広範囲をカバーできる新技術を積極的に導入し、インフラ維持に伴う国民の負担を軽減する工夫が求められます。
現在の通信インフラの基盤を成すNTT法は、40年前に制定されたもので、全国どこでも固定電話を提供する義務がNTTに課されています。しかし、通信の主役はすでに携帯通信や光ファイバーによるブロードバンド通信に移行しており、固定電話に依存する人々は減少しています。この状況を踏まえれば、規制の見直しはむしろ遅すぎたといえるでしょう。
これからの通信インフラを設計する上での重要なキーワードは「技術中立性」です。固定電話や光ファイバーといった特定の技術に偏ることなく、多様な技術を組み合わせて効率的にネットワークを構築する発想が必要です。その代表例として、低軌道の衛星通信が挙げられます。この技術は地球全体をカバーでき、2023年1月の能登半島地震では非常時の通信手段としてその価値を証明しました。また、日本国内ではソフトバンクやNTTドコモが、成層圏を旋回する無人飛行機に基地局を搭載する「HAPS」という技術の実用化を目指しています。
これら空から無線を降らせる技術は、地上に有線回線を張り巡らせる方法と比べて、人口が少ない過疎地を含む広範囲を効率的にカバーできるという利点があります。通信品質など課題も残されていますが、こうした新技術を取り込んだ未来を見据えた規制の導入が期待されます。
日本は光ファイバー網の普及率が99.8%と、米国などを大きく上回っています。しかし、この「光ファイバー信仰」が社会や産業のデジタル化に十分活用されているとは言い難く、他国と比べて見劣りしているのが現状です。手持ちのインフラを最大限に生かし、新技術を融合させることで、社会や経済の活力を引き上げる道筋を模索すべき時です。
SNSでは、「未来型通信インフラが必要」「過疎地でも平等に通信が使える環境を」といった期待の声が上がっています。日本が次世代通信技術を活用し、真に持続可能なユニバーサルサービスを構築することは、社会全体の利便性向上と国際競争力強化につながるでしょう。