コメ不足と価格高騰が浮き彫りにした日本の農業政策の課題と転機

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2024年8月、日本各地のスーパーや小売店でコメやパックご飯の購入量が例年の1.5倍に急増しました。この現象は、南海トラフ地震臨時情報や台風の影響で消費者が買い込みに走った結果とされます。一部地域では品薄状態となり、需要が供給を上回る状況が顕著になりました。その背景には、供給抑制を重視する旧来の農業政策が影響しているといえます。

8月初旬、日経POS(販売時点情報管理)のデータ分析によると、うるち米やパックご飯の購入量は2023年平均比で4~5割増加しましたが、首都圏や近畿では第2週になると伸び率が鈍化し、一部で購入が困難な状況が確認されました。この供給不足の主因として昨年の猛暑が挙げられます。高温障害による品質低下が生産量減少を招きましたが、全国で高温耐性品種の作付け率はわずか14.7%にとどまっています。

さらに、2024年6月末時点の民間在庫量は前年より21%減少し、過去最低の156万トンに落ち込みました。それにもかかわらず、農林水産省は備蓄米の柔軟な放出には消極的でした。この対応不足が消費者の不安を煽り、混乱を拡大させたと指摘されています。

価格の上昇も深刻で、日経ナウキャスト日次物価指数によると、2024年8月28日時点でうるち米を中心とした穀類の価格は前年同期比で40%以上の伸びを記録しました。この影響で、JAグループが農家に支払う概算金も新潟や北海道など主要産地で2~4割増加しましたが、価格上昇は消費者のコメ離れを加速させる可能性があります。この悪循環が続けば、コメ需要の減少がさらなる生産抑制を招き、日本の食料供給基盤が一層脆弱になる懸念があります。

長期的には異常気象や地政学リスクもあり、世界的に食料価格が上昇する中で、日本の農業政策は転換期を迎えています。現在もコメ価格の安定を優先する政策が続き、飼料用米や大豆への転作を支援する事業に約3000億円が投じられていますが、これは供給力強化には結びついていません。

持続可能な農業の実現には、生産性向上を目指した大規模農業の推進や、高温耐性品種の導入促進が必要です。農林水産省の分析によると、15~20ヘクタール規模の農家ではコメの生産コストが60キログラムあたり約1万円と、0.5~1ヘクタール規模の半分以下に抑えられることが明らかになっています。また、国内需要が減少している一方で、2024年上期(1~6月)のコメ輸出額は前年同期比で3割増加しました。訪日外国人の増加に伴う外食需要の拡大も、コメ需要を支える重要な要素です。

新米が出回る9~10月には供給不足が一時的に解消される見通しですが、根本的な供給力の低迷が改善されなければ、再び混乱が起きる可能性は否定できません。今こそ、日本の農業政策を見直し、持続可能で安定した供給体制を構築する時期といえるでしょう。SNS上では「農業政策の転換を求む」「価格高騰でコメが手に届かない」といった声が目立ち、政策の方向性が問われています。

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