タイ国民党の挑戦―憲法改正と国軍影響排除で単独過半数を目指す

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

2024年8月、タイの民主派最大野党「国民党」のナタポン党首(37)が、2027年までに実施される下院総選挙で「単独過半数を目指す」との決意を語りました。国軍の影響下にある憲法裁判所の権限見直しを主要政策として掲げ、政治改革への意欲を示しました。

国民党は前進党の後継として2024年8月上旬に結成され、所属議員は143人にのぼります。前進党は、王室への不敬罪に関する刑法改正を公約に掲げていましたが、これが「国家転覆にあたる」と憲法裁判所に判断され解党処分を受けました。ナタポン氏は、憲法裁判所について「政治の安定にはその権限を弱める必要がある」と指摘し、年内に憲法改正案を提出する方針を表明しました。これには、政党の解党や議員資格停止の権限を制限する条文の修正が含まれます。

また、国民党は前進党の政策を引き継ぎ、不敬罪の改正、国軍の政治影響力排除、地方分権の推進を掲げています。不敬罪の改正は、国王が絶対的権威を持つタイ社会ではタブー視されてきましたが、ナタポン氏は「何度でも立ち上がる」と述べ、解党処分を受けた場合でも後継政党で活動を続ける意向を示しました。

さらに、軍の国政関与を弱めるため「文民統制を導入すべき」と提案し、軍退役後の一定期間は議員職に就けない仕組みを導入する必要性を強調しました。この点について、先進国の制度を参考にする考えを示しています。

2027年までに予定される下院選挙(定数500議席)に向け、国民党は現有143議席から270議席の獲得を目指しています。ナタポン氏は「国会での活動を通じて支持者を拡大する」と語りました。一方で、保守派の弾圧に対する抗議活動については「国軍にクーデターの口実を与えるだけだ」と否定し、政権交代後に政治改革を進める方針を示しました。

2024年8月中旬にはタクシン元首相の次女でタイ貢献党の党首、ペートンタン氏(38)が新首相に就任しましたが、ナタポン氏は「特定の血縁者によって政治のトップが独占されるべきではない」と批判しました。国民党と貢献党の連立については「時期尚早」と述べるにとどめています。

ナタポン氏はチュラロンコン大学でコンピューターサイエンスを専攻し、IT関連企業の役員を務めた経歴を持ちます。2019年に初当選して以降、政府機関のデジタル化を推進するなど、タイの近代化にも貢献してきました。SNSでは「タイの民主主義に新たな風を」「国民党の挑戦に期待」といった声が広がっています。タイの政治改革の行方に注目が集まる中、国民党がどのような成果を上げるのかが問われています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*