2019年6月4日時点で、ビール大手3社の2019年1月~6月期連結純利益(国際会計基準)の決算予想が出揃い、その内容が「明暗」を分ける結果となる見込みです。特に注目されるのは、キリンホールディングス(以下、キリンHD)の大幅な減益予測でしょう。キリンHDは2019年4月、オーストラリアの連結子会社で収益性の低下が見られたとして、571億円もの減損損失を計上したためです。減損損失とは、企業が保有する資産の収益性が低下し、投資額を回収できる見込みがなくなった場合に、帳簿上の価格を実際の価値まで引き下げて計上する損失のことで、これが純利益を大きく押し下げる要因となっています。
一方で、サッポロホールディングス(以下、サッポロHD)は、保有する不動産の売却益が寄与し、純利益が改善する見通しで、対照的な結果となりそうです。また、アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)は、前年2018年に計上した関連会社の株式評価益がなくなったため、純利益はほぼ横ばいで推移する模様です。このように、同じビール業界のトップ企業であっても、事業戦略や一時的な要因によって、上半期の業績に大きな違いが生じていることが分かりますね。
ビール市場の競争激化と成長戦略の行方
この上半期の決算予想は、各社の経営状況や戦略を映し出しており、今後の年間決算にも影響を与えることが予測されます。2019年12月期通期の業績見通しについて、アサヒGHDは、買収によって手に入れた海外のプレミアムビール事業の成長が貢献し、増益を見込んでいます。サッポロHDも、「エビス」ブランドの新商品投入による効果などで、通期での増益を見込むとしています。これは、国内市場の縮小傾向が続く中で、いかに新たな収益源を確保できるかが、各社の成長を左右する重要な鍵となっていることの表れでしょう。
一方、キリンHDは、上半期に計上した減損損失の巨大な影響が残るため、通期でも最終減益となる見込みです。しかし、その中にも明るい兆しは見えています。同社の新ジャンル商品である「本麒麟」は好調な販売を維持しており、さらに注力している医薬品事業も順調に推移しているとのことです。私見ですが、今回の減損は、将来の成長に向けた事業ポートフォリオの見直しを断行した結果であり、短期的な痛みを伴いつつも、本業での成長や多角化戦略の着実な実行によって、来期以降のV字回復に期待を繋げていると評価できるのではないでしょうか。
今回の決算予想を受け、SNS上では「キリンは減損が痛いけど本麒麟の勢いがすごい」「サッポロの不動産売却益は賢い」「アサヒは海外事業の強さが際立っている」といったように、各社の動向に注目する反響が散見されます。ビール市場は国内での競争が激しいだけでなく、消費者の嗜好も多様化しています。各社がどのようにこの難局を乗り越え、独自性を発揮していくのか、今後の動向から目が離せません。