韓国検察、文在寅前大統領を捜査対象に―政治報復論争の行方

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2024年9月1日、韓国メディアは、検察が進める収賄事件の捜査において、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領を被疑者として明記した捜索令状が発行されたと報じました。この捜査は、文氏の側近であり現在野党「祖国革新党」を率いる曺国(チョ・グク)代表への事情聴取を含む広範なものです。野党はこれを「政権による政治報復だ」と強く反発しています。

検察は、文氏の娘の元夫が航空会社に入社した際の経緯を巡る疑惑を調査しています。当時与党だった「共に民主党」の議員が設立した航空会社が、元夫を役員として採用した見返りに、政権内のポストを得たのではないかと見られています。さらに、この元夫が役員として受け取った給与約2億ウォン(約2180万円)が文氏への賄賂に該当する可能性があるとして、8月31日には文氏の娘の自宅が家宅捜索を受けました。

韓国では、大統領が持つ強大な権力とその行使が、政権交代後に問題視されるケースが繰り返されています。これまでに複数の大統領経験者やその周辺が捜査対象となり、有罪判決を受けた例も少なくありません。検察の捜査や特別赦免(恩赦)が政権の政治的手段として利用される傾向があることは、韓国政治の特徴ともいえます。

文前政権もその例外ではなく、末期の2021年には保守系の朴槿恵(パク・クネ)元大統領を恩赦で釈放しました。この動きは、大統領選を控えた保守派への揺さぶりと見なされました。現在の尹政権も同様に、文氏周辺への捜査を進める一方で、8月15日には文氏の腹心とされる金慶洙(キム・ギョンス)前慶尚南道知事の公民権を復活させる措置を講じ、野党を揺さぶっています。

SNSでは「大統領経験者が繰り返し捜査対象になる構造を見直すべき」「政治報復の連鎖が韓国の民主主義を損ねている」といった声が広がっています。韓国政治の現状は、政権交代後の捜査が正義の追求なのか、あるいは権力の私的利用なのかを巡る議論を引き起こしています。文氏を巡る捜査は、韓国の政治文化に新たな問いを投げかけると同時に、その行方に国際的な関心も高まるでしょう。

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