温暖化ガス排出削減とエネルギー自給率の向上を目指す中で、再生可能エネルギーの導入拡大は不可欠です。中でも、日本の地理的条件に適した洋上風力発電は、その潜在能力に期待が寄せられています。しかし、現状では技術的課題やコストの壁が立ちはだかり、思うように進んでいないのが実情です。
2050年までにカーボンニュートラルを達成するには、電源の脱炭素化が急務となります。太陽光発電は固定価格買取制度(FIT)の適用終了や敷地確保の困難さから成長が鈍化していますが、洋上風力は大規模な拡大余地を持つ再生可能エネルギーとして期待されています。日本は英国などと比べ、着床式に適した遠浅の海域が少ないため、浮体式風力発電の普及が重要になります。ただし、浮体式は技術的なハードルが高く、コスト増も避けられません。
一方で、洋上風力発電の拡大は日本企業にとっても大きな成長機会を提供します。日本企業は風車製造からは撤退していますが、駆動装置「ナセル」の部品やケーブルといった関連技術では国際的に高い評価を得ています。この分野をさらに強化することで、日本の産業競争力を高めることが可能です。さらに、洋上風力の設置には港湾インフラや作業船が必要で、造船業をはじめとした関連産業の裾野も広がります。
韓国やベトナムなどアジア諸国は風力産業の育成に力を入れ、国際的な人材争奪戦が進んでいます。日本が手をこまねいていれば、資金も人材も海外に流れてしまうでしょう。国内では2020年に「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」が策定した目標があり、2030年までに10ギガワット、2040年までに30〜45ギガワットの開発案件を掲げています。しかし、日本風力発電協会が示す2050年目標(着床式40ギガワット、浮体式60ギガワット)とは大きな開きがあります。浮体式技術の確立を待っていては、競争力を失いかねません。
政府は次期エネルギー基本計画で、より明確で野心的な風力導入目標を掲げるべきです。その際、短期から長期にわたる産業波及効果を考慮し、発電機部品や港湾インフラなどに必要なリソースを見渡せる「グランドデザイン」を描く必要があります。具体的には、サプライチェーンのロードマップを作成し、国内外の投資家や企業に日本の洋上風力発電の潜在力を訴求すべきです。
これを実現するには、関係省庁間の連携や政府、企業、地域住民、漁業者といった幅広い関係者間の問題意識の共有が求められます。これまでの延長線上では脱炭素化は進みません。すべてのステークホルダーが協力し、気候政策を前進させるための仕組みづくりが必要です。SNSでは「日本の洋上風力の可能性」「カーボンニュートラル実現の鍵」といった声が増えており、国民の関心も高まっています。今こそ日本が一丸となり、洋上風力発電を軸に持続可能な未来を築く時です。