JAPEX、化石燃料への再投資で生き残りを図る—2030年を見据えた戦略転換

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石油資源開発(JAPEX)は2030年までに化石燃料開発への投資額を従来計画の2倍となる4000億円に拡大すると発表しました。原油価格の安定や電気自動車(EV)の成長鈍化を背景に、同社は化石燃料需要が底堅く推移すると判断したためです。一方で、再生可能エネルギーの採算悪化が進む中、欧米の主要エネルギー企業も化石燃料への投資に回帰しています。JAPEXはこれらの動向を踏まえ、エネルギー需要の変化に即応するため経営計画を見直しました。

2022年に策定された2031年3月期までの中期経営計画では、化石燃料開発に2300億円を投じる方針でしたが、この額を約2倍に引き上げます。具体的には、アメリカ・テキサス州でのシェールオイル採掘やノルウェー北海での油ガス田開発に注力します。同社のシェールオイル生産量は現在日量1万5000バレルで、今後は鉱区の取得から採掘までを一貫して手がけることで収益性を向上させる狙いです。

再生可能エネルギー事業については、従来の計画で900億円の投資を予定していたものの、資材高騰や競争激化により洋上風力発電の規模を縮小。太陽光やバイオマス発電といった小規模なプロジェクトに限定する方針です。背景には、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国による協調減産や、欧米でのEV需要の減速があり、これらがガソリン需要を支え、原油価格を底上げしていると見られます。

ノルウェーでは、同国の石油・ガス開発企業への出資比率を49.9%から100%に引き上げ、開発を加速する計画です。7件のプロジェクトに参画することで、天然ガスや石油の採算性を確保しつつ収益拡大を図ります。

欧米のエネルギー大手も化石燃料に再び力を入れています。例えば、米エクソンモービルは2023年に米シェール企業を約595億ドルで買収することを発表し、英シェルやBPも化石燃料生産に注力しています。一方、環境や持続可能性を重視するESG投資は、2022年に世界的に14%減少しました。運用成績の悪化や「グリーンウォッシュ」批判がその要因とされています。

ただし、長期的なエネルギー動向としては、国際エネルギー機関(IEA)が2030年までに石油需要のピークを迎えると予測しています。JAPEXの山下通郎社長は、「大規模プレーヤーへの集約が進む中、ある程度の規模がなければ生き残りは難しい」との見解を示しています。

JAPEXは化石燃料による収益を基盤としつつ、将来的には二酸化炭素を地下に貯留する「CCS(炭素回収・貯留)」への投資を拡大する方針です。日本政府が支援する「先進的CCS事業」では北海道や新潟県を含む3カ所でプロジェクトが採択され、年間600万トンの貯留能力を目指します。将来的な脱炭素社会を見据え、化石燃料の収益を新技術への投資に活用する戦略で、JAPEXは競争の激化するエネルギー市場での生き残りを目指します。

この戦略転換は、化石燃料需要の現実と脱炭素社会への移行という二つの相反する目標をどのように両立させるか、企業にとっての課題を浮き彫りにしています。

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