新型コロナウイルスの影響で縮小が加速した紳士服市場が、新たな需要を求めて海外展開や若者向けブランドに注力しています。神奈川県鎌倉市を拠点とする「メーカーズシャツ鎌倉」は、2024年1月19日に米国市場への再進出を果たし、「鎌倉シャツ」のブランド力を再び世界に発信します。一方、国内の大手紳士服チェーンも若年層をターゲットにした新戦略を展開中です。
メーカーズシャツ鎌倉は、ニューヨークに「Kamakura Shirts」をオープン。かつて2012年10月にニューヨークに進出しましたが、コロナ禍の影響で2020年末に撤退していました。今回の再挑戦では、完全予約制のオーダーサロン形式を採用し、既製のシャツやスラックス、ジャケット、コートを展示するショールーム機能も兼ね備えます。米国市場では高品質な日本製衣料への評価が高く、試験的に実施していた予約販売では、国内販売価格の約8割増で販売が可能であることが確認されました。現時点で年間2000枚の注文を受け付けており、円安の追い風も受け、初年度売上高5億円を目指しています。
大手チェーンも市場の再構築を図っています。AOKIホールディングスは、若者向けブランド「ORIHICA(オリヒカ)」を、2030年3月期までに現在の97店舗から200店舗へと拡大する計画を発表。カジュアル要素を強化した商品戦略を中心に展開していきます。また、青山商事は、2027年3月期までに新たに20~40店舗を出店予定です。「スーツスクエア」をはじめ、複数ブランドを集約した形態や、都心部を中心とした新しい小型店の開設に注力。郊外型店舗「洋服の青山」と異なり、コンパクトな店舗面積で在庫を抑える形式を採用し、全世代をターゲットに収益を多角化します。
紳士服への支出は、コロナ禍の影響で大きく減少し、業界全体が苦戦を強いられています。この状況下で収益を確保するには、多様化した顧客ニーズに対応した商品戦略と収益構造の再構築が不可欠です。国内外での新たな挑戦が、かつての輝きを取り戻す鍵となるでしょう。