中国湖北省武漢市では、百度(バイドゥ)が展開する自動運転タクシーが街を走り抜け、未来の交通を現実のものとしています。2024年1月現在、同市では東京都の約1.5倍の面積を無人タクシー約400台がカバー。利用料金は1キロあたり約30~40円と手頃で、多くの市民がその利便性とコストパフォーマンスを評価しています。
百度の李彦宏CEOは、2023年8月22日の決算説明会で自動運転技術の進展を誇らしげに発表しました。同社は車両数を1000台に増やし、2030年までに運行エリアを100都市に広げる計画です。すでに黒字化も視野に入れており、テクノロジーの力で都市の移動手段を変えようとしています。
しかし、この進展の裏側では課題も顕在化しています。タクシーやライドシェア運転手の間では、自動運転車が仕事を奪うとの抗議活動が相次いでいます。一部の運転手は「技術が未成熟で、車両の立ち往生が渋滞を引き起こしている」と厳しく批判。中国のSNSでは自動運転車がトラブルを起こしたように見える映像が拡散し、議論を呼んでいます。
それでも中国政府は技術革新を後押しし続けています。2023年7月、上海市で行われた秘密会合では、業界トップが集まり、次なるターゲットとして自動運転技術を推進する方針が打ち出されました。米テスラの「フルセルフドライビング(FSD)」をベンチマークに据え、中国の産官学が一体となって学び、世界トップを目指すという構想が描かれています。
EV市場でテスラを迎え入れ、世界有数のサプライチェーンを構築した中国は、自動運転分野でも同じ成功を再現しようとしています。百度のタクシーやファーウェイの最新技術を搭載した車両が街を走る中、中国は新技術の巨大な実験場となっています。一方、EV市場で出遅れた日本は、この分野でも米中の後塵を拝しているのが現状です。
百度の自動運転タクシーに乗ると、年々スムーズになっていく走行技術を実感します。このような取り組みを通じて、中国は次世代技術で先を行こうとしており、その進展は世界の自動運転技術にも影響を与えるでしょう。