100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業が、海外市場で攻勢をかけています。特にアメリカ市場に注力し、現在の約130店舗を2031年2月期までに1000店舗に拡大する計画です。この取り組みは、国内シェア6割を誇る同社が少子化による国内市場縮小を見据え、グローバル企業への脱皮を目指す一環です。
2024年には、ロサンゼルス・ドジャースのスポンサーに就任。球場に掲げられた「DAISO」ロゴは試合中継を通じて頻繁に露出し、ブランドの認知度向上に寄与しています。アメリカ事業を担当する鈴木拓取締役は「今は投資の時期」と語り、物流コストが収益を圧迫する中でも事業拡大を続けています。
アメリカには「ダラーショップ」と呼ばれる低価格雑貨店が多数存在しますが、ダイソーの商品はその中でも日本特有のデザインや高い品質で注目を集めています。特に日本語が書かれた商品や小型のアイデア商品、可愛らしいキャラクターグッズは「クール」や「かわいい」といった好意的な反応を得ています。さらに、キッチン用品なども人気を集め、コンパクトなサイズ感や機能性が評価されています。
食品の販売も重要な集客施策として位置付けられています。日本食ブームを背景に、現地の消費者からの引き合いが強く、ダイソーは日本の食品メーカーと連携して販路拡大を進めています。
2022年の急激な円安は、輸入依存の高いダイソーにとって試練でしたが、逆境を跳ね返す契機にもなりました。物流コストを削減するため、商品のパッケージサイズを縮小し、効率的な輸送を実現。たとえば、台所用お玉のセットではパッケージ面積を8割削減し、クッションは真空パック化するなどして積載効率を向上させました。この取り組みが粗利益率の改善にも寄与し、「円安がなければここまでの進化はなかった」と矢野靖二社長は語ります。
アメリカでの成功をモデルに、インド市場でも攻勢をかけています。将来的には200店舗体制を目指し、世界各地での成長を続ける考えです。矢野社長は、創業者で父の矢野博丈前社長が語っていた「恵まれない幸せ」という言葉を胸に刻みながら、苦労を乗り越えた先の成功を目指しています。
矢野社長が2018年に就任して以降、上場計画も進行中です。「7合目」に達したと言われる現在、アメリカやインドといった巨大市場を攻略しながら、さらなる持続的成長を目指しています。
ダイソーの挑戦は、逆境を乗り越え、新たな市場で存在感を高める好例です。円安を追い風に変え、グローバル展開を成功に導くその姿勢は、日本の企業にとっても学ぶべき示唆を与えてくれるでしょう。