公的年金制度の未来—財政検証が示す希望と課題

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2023年7月3日、厚生労働省は公的年金の財政検証結果を公表し、制度改正の提案(オプション試算)を5つ提示しました。また、新しい試みとして「年金額分布推計」も初めて発表され、年金制度の将来像について多角的な議論が可能となりました。この財政検証は、今後100年間の年金財政の収支をさまざまな想定に基づいて試算するもので、所得代替率の推移を示す重要な作業です。

今回の検証では、少子高齢化が進む中でもスライド調整期間が短縮され、所得代替率をより高い水準で安定させることが可能であると示されました。前回の2019年検証では、スライド調整期間が27〜28年に及び、所得代替率が50%台前半にまで低下するケースが想定されていましたが、今回の検証では13年に短縮され、所得代替率も57.6%までの低下にとどまる見通しです。この背景には、日本人の労働参加率の大幅な向上があります。

特に2013年から2023年にかけて、女性や高齢者の労働参加が劇的に進みました。25〜34歳の女性の就業率は70.7%から82.5%に、55〜64歳では54.2%から69.6%に上昇しています。また、60〜64歳の男性の就業率は72.2%から84.4%に、65〜69歳では48.8%から61.6%に急上昇しました。この労働参加率の拡大は、年金財政において現役世代の増加と同様の効果を生み出し、年金制度を実質的に「若返らせる」役割を果たしています。

さらに、現行制度を改善するための提案として「被用者保険の適用拡大」と「在職老齢年金の見直し」が挙げられました。被用者保険の適用拡大は、短時間労働者や専業主婦が厚生年金保険に加入できるようにするもので、年金制度の公平性を高める重要な一歩です。一方、在職老齢年金の見直しは、65歳以降も働く人に対して報酬比例部分の給付がカットされる現行制度の撤廃を提案するものです。これは、高齢者の就業意欲を阻害しないためにも早急に進めるべき課題といえます。

また、初めて公表された年金額分布推計では、女性の就業率向上や厚生年金加入期間の増加が、将来の高齢女性の受給額分布を大きく改善することが示されました。この結果は、低年金リスクの低下を意味し、特に若年層が合理的なライフプランを立てる際の重要な参考情報となります。

SNSでは、「年金制度が若返るのは朗報だ」「在職老齢年金の見直しは時代に即している」といった前向きな意見が寄せられる一方、「適用拡大に伴うコスト負担への懸念」なども議論されています。

今回の財政検証は、年金制度に不安を抱える人々に対し、明確な希望と課題を提示しました。日本の公的年金制度がどのように進化していくのか、その未来を見据えながら、個人としても適切な選択をしていくことが求められる時代です。

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