アルツハイマー病診断の課題と未来—正確な検査技術が治療の鍵に

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アルツハイマー病は認知症の代表的な原因疾患として知られていますが、最新の研究によると、その診断の約4割に誤診の可能性があることが分かりました。国内の認知症患者の約7割がアルツハイマー病とされていますが、現行の診断方法では似た症状を持つ別の疾患との見分けが難しいため、誤診が発生しやすい状況です。この問題は、高齢化による認知症患者の増加に伴い、さらに深刻化すると考えられています。

現在の診断は、問診や認知機能テストを主軸とする方法で、精度には限界があります。例えば、米国でアルツハイマー病と診断された447人の脳を調査した研究では、3%の患者しかアルツハイマー病単独の異常が認められず、約8割が血管性認知症やレビー小体型認知症などの併発が確認されました。このように、症状の原因を特定することが難しい現状があります。

従来、誤診の影響は比較的小さかったとされています。多くの認知症治療薬の効果が似ていたためです。しかし、アルツハイマー病の進行を抑える世界初の治療薬「レカネマブ」(商品名:レケンビ)の登場によって状況は一変しました。この薬は原因物質とされるアミロイドベータに作用し、病気の進行を遅らせる効果が確認されています。2023年に実施された臨床試験では、18カ月間で認知機能の低下を27%抑える結果が得られました。このような新薬の適切な投与には、早期かつ正確な診断が不可欠です。

現在利用されている検査技術には課題が多くあります。例えば、陽電子放射断層撮影(PET)検査は患者の費用負担が高く、脳脊髄液検査は体への負担が大きいです。こうした問題を解決するために、血液検査などの簡便な診断技術の開発が急務となっています。量子科学技術研究開発機構(QST)は、2027年を目標に脳内原因タンパク質の蓄積を調べる血液検査技術を開発中で、2030年頃には実用化が期待されています。この技術が普及すれば、健康診断でも認知症のリスクを簡単に把握でき、無駄な投薬や検査を減らすことが可能になるでしょう。

アルツハイマー病の発症や進行メカニズムは、いまだ完全には解明されていません。1906年の初めての症例報告以降、研究は進んでいるものの、多くの治療薬開発が失敗に終わっています。しかし、適切な検査技術が確立されれば、病気の進行を詳細に追跡することが可能になり、新薬開発や治験の効率化が進むでしょう。

世界保健機関(WHO)の予測によると、2023年時点で約5,500万人とされる世界の認知症患者数は、2050年には約2.5倍の1億3,900万人に達するとされています。高齢化が進む中で、認知症治療の選択肢は多様化すると見込まれます。正確な診断技術の開発は、患者とその家族の負担を軽減し、医療資源の効率的な配分を実現するための鍵となるでしょう。

SNSでは、「誤診のリスクをどう減らすべきか」「新しい検査技術が家族の安心につながる」といった声が広がっています。認知症の診断と治療は、患者のQOL(生活の質)に直結する問題であり、私たち全員が注目し続けるべきテーマです。技術と研究の進展により、より明るい未来が実現することを期待したいです。

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