2019年07月10日に発表された「第47回日本の専門店調査」の結果は、日本の小売業界が大きな転換期にあることを鮮明に描き出しました。深刻化する人手不足や、運営効率を極限まで高める必要性に迫られ、これまで当たり前だった営業スタイルを見直す企業が急増しています。調査によると、営業時間の短縮をすでに実施した、あるいは前向きに検討していると回答した企業は全体の26.8%に達しました。これは前回調査から4.2ポイントも上昇しており、現場の切実な状況が伺えます。
ネット上でも「無理な24時間営業はやめるべき」「店員さんも人間だから休んでほしい」といった、消費者の温かい声が目立ち始めています。企業側が営業短縮へ踏み切る最大の動機は、61.3%が挙げた「従業員の働き方改善」です。次いで「人手不足」が46.8%となっており、少子高齢化によって労働力が減少する中で、いかに働きやすい環境を整えて優秀な人材を確保するかが、経営の最重要課題となっています。サービスの質を維持するための「戦略的な休息」が今、求められているのでしょう。
具体的な動きを見てみると、首都圏で展開する中堅スーパーのいなげやは、2017年から2018年03月にかけて約60店舗で開店時間の繰り下げを実施しました。また、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスも、2019年度以降の24時間営業店の新規出店ペースを従来の半分に絞り込む方針です。こうした決断は、単なるコストカットではなく、持続可能な店舗経営に向けた英断だと言えます。過剰な便利さを追求してきた日本社会が、ようやくその反動と向き合い始めたのかもしれません。
営業日数の削減に踏み切る企業も約14%存在し、特に年末年始の営業を見直す動きが加速しています。スーパーのマルエツでは、2019年の元日に商業施設内を除くほぼ全店で休業を敢行し、大きな話題を呼びました。かつてはお正月返上で働くことが美徳とされる風潮もありましたが、今は「家族との時間を大切にする」価値観が重視されています。編集部としては、こうした休息の確保が従業員のモチベーション向上に繋がり、結果として顧客満足度を高める好循環を生むと確信しています。
キャッシュレス決済がもたらす店舗運営の革命
人手不足を補う切り札として、テクノロジーの活用も加速しています。インバウンド需要の拡大や政府の推進もあり、日本各地で「キャッシュレス決済」の導入が進んでいます。これは現金を使わず、クレジットカードや電子マネー、スマートフォンのアプリなどで支払う仕組みです。店舗にとってはレジ締めの作業負担が減るだけでなく、購買データを分析して商品開発に活かせるほか、人手を介さない「無人レジ」の導入によって、人件費の抑制と混雑緩和を同時に実現できるメリットがあります。
調査によれば、電子マネーを導入している企業はすでに半数を超え、そのうち約4割が今後も活用範囲を拡大する意向を示しています。さらに、スマートフォンのQRコードを用いた決済についても、約3割の企業が導入に意欲的です。家電量販店のビックカメラが「LINE Pay」を全店で導入したほか、アパレル大手のストライプインターナショナルも「楽天ペイ」や中国の「アリペイ」などを採用しました。スマホ一つで買い物が完結する未来は、私たちのすぐ目の前まで来ているのです。
一方で、ビットコインに代表される「仮想通貨」に対しては、各社とも非常に慎重な構えを見せています。導入済みかつ拡大予定と答えた企業はゼロであり、7割以上の企業が「導入計画はない」と回答しました。これは過去に発生した仮想通貨の流出事件などが尾を引き、決済手段としての信頼性がまだ十分に確立されていないことが背景にあります。便利さの追求も大切ですが、やはり決済の基本は「安心・安全」であるべきだという、企業側の責任感の表れと言えるでしょう。
2019年07月10日現在の小売業界は、利便性と労働環境のバランスを再構築する過渡期にあります。営業時間を削り、最新技術を取り入れることで、店舗は「より人間らしく働ける場所」へと進化していくことでしょう。私たち消費者も、ただ便利さを享受するだけでなく、その裏側にある働き手の努力に思いを馳せることが大切です。テクノロジーと優しさが共存する新しい日本の商店像が、どのような景色を見せてくれるのか、これからの展開が非常に楽しみでなりません。