2024年8月31日、パリ・パラリンピック男子100メートル背泳ぎで窪田幸太選手(NTTファイナンス)が銀メダルを獲得しました。生まれつき左手に障害を持つ窪田選手は、右手一本で水をかく独自の泳法を進化させ、東京大会の5位から大きく躍進する結果を残しました。
窪田選手の泳ぎは、まさに「イノベーション」と呼べるものでした。バタ足の合間にドルフィンキックを挟むことで、右手の力を温存しながら推進力を高めるこの手法は、バタフライの技術を応用したものです。この工夫により、腰が沈むのを防ぎつつ水面を滑るようなスムーズな泳ぎを実現しました。この技術は代表の同僚、荻原虎太郎選手の泳ぎを参考にしたものですが、足の力が強い窪田選手の体に見事に適応し、昨年の世界選手権で2位に輝く原動力となりました。
決勝では、世界王者であるスペインの選手との一騎打ちとなりました。窪田選手は独特のリズムを持つ泳ぎで序盤をリードし、2位で折り返しましたが、課題としていた後半で徐々に引き離されてしまいました。「自分の持ち味を生かして前半に攻めたが、最後まで行ききれなかった」と振り返る窪田選手。ゴール後、自己ベストにわずか0.02秒差まで迫ったものの、優勝タイムに届かなかった悔しさから、プールの壁を拳で叩いてその想いを表現しました。
とはいえ、この銀メダルは大きな成長を示す成果です。東京大会では、選手村で同部屋だった鈴木孝幸選手からメダルを首にかけてみないかと勧められた際、「初めてのメダルは自分で獲得したものがいい」と断ったという窪田選手。24歳にして念願のメダルを手にし、「望んでいた色ではないが、自分のメダルを首にかけられて嬉しい」と笑顔を見せました。
SNSでは「窪田選手の工夫と努力が光る」「独創的な泳ぎが新たな可能性を示した」といった声が多く寄せられ、彼の挑戦が大きな反響を呼んでいます。この銀メダルは、窪田選手の技術革新と不屈の努力が結実した証であり、未来に向けたさらなる挑戦への力強い一歩となるでしょう。