近年、災害時の備蓄に力を入れる自治体が増えています。特に南海トラフ地震や台風10号のような広域災害、さらには道路寸断による孤立集落の発生といった「二つの孤立」を見据えた戦略の見直しが進んでいます。災害対策基本法では、自治体が食料やブルーシートといった資機材を備蓄し、地域防災計画に備蓄量や調達方法を明記することが求められています。
政府は最低3日、できれば1週間分の備蓄を推奨しており、これを受けて東京都では2023年度時点でクラッカーなどの備蓄食料を2011年度比で約4倍の731万食に増加させました。さらに、民間倉庫の在庫を災害時に調達する「流通備蓄」を含めると951万食を確保しています。東京都の計画では、1800万食の備蓄を目指しており、その半数をカバーする形です。品川区では、水で戻せるアルファ化米21万食を都から受け入れるなど、区市町村とも連携を強化しています。
備蓄の工夫も進んでいます。東京都は熊本地震の教訓から、食物アレルギーに対応した米粉クッキーや乳児向け液体ミルクを追加。2024年度からは携帯トイレ600万回分を新たに備蓄する予定です。同様に、名古屋市も食料備蓄を2011年度比で4倍以上に増やし、2028年度までに185万食の確保を目指しています。
孤立集落への備えも重要です。2023年1月の能登半島地震では、道路の寸断により支援が届かない集落が発生しました。この教訓を受け、秋田県男鹿市では2024年度予算に約80万円を計上し、高台の福祉施設などに長期保存が可能な食料や下着を備蓄する予定です。同様の取り組みは栃木県佐野市でも進められています。
内閣府の調査によれば、全国の農業集落の約3割にあたる約1万7000カ所が災害時に孤立する可能性があるとのことです。三重大大学院の川口淳教授は「地域特性に応じた品目や量のきめ細かな見積もりが必要」とし、「むやみに備蓄量を増やすと管理が難しくなるため、災害リスクの高い地域を優先的に対応すべき」と提言しています。
SNSでは「東京都の備蓄量すごい!」「地域特性を考えた備えが必要だ」といった声が上がり、自治体の取り組みに注目が集まっています。これからの防災には、地域ごとのニーズに応じた計画と住民との連携がますます重要になっていくでしょう。