異色のスカウト部長が描く未来~DeNAの挑戦と変革~

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プロ野球のスカウトといえば、選手一人ひとりの動きを鋭く観察しながらメモを片手に動き回る姿を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、横浜DeNAベイスターズのスカウト部長である長谷川竜也さん(35)は、そんな伝統的なイメージを覆す存在です。野球未経験、さらに金融業界出身という異例の経歴を持つ長谷川さんは、どのようにして球界に新たな風を吹き込んでいるのでしょうか。

大学卒業後に証券会社に就職した長谷川さんは、企業のM&A(合併・買収)に関わる助言や投資業務を通じて多忙な日々を送っていました。その中で「企業にとって一生に一度あるかないかの出来事」に携わる責任感とやりがいを感じつつも、心の奥には「スポーツビジネスに関わりたい」という夢が秘められていました。中学から大学までサッカーに熱中し、欧州サッカーチームの経営ニュースに触発されるたびに、自身もスポーツ界で何かを成し遂げたいと思っていたのです。

転機は新型コロナウイルス禍に訪れました。外出自粛が続く中で自分自身を見つめ直し、「本当にやりたいことは何か」と問いかける日々が続きました。その結果、プロ野球チームやJリーグクラブ約20団体に対し、独自に経営改善案をまとめた資料を送り、自ら行動を起こしました。その努力が実を結び、DeNAへの入社が決定したのです。

当初、長谷川さんが担当したのは経営計画の策定やグッズ販売戦略の立案など、ビジネス経験を活かせる分野でした。しかし2023年末、彼に突然舞い込んできたのはスカウト部長への異動の打診でした。野球経験が小学校のクラブ活動程度だったこともあり、驚きと不安が入り混じる中で引き受けたこの役職には、DeNAならではの狙いがありました。チームの管理部門と選手視察の現場を分離し、全体を俯瞰しながらマネジメントに徹する新しいスカウト部長像を作り上げるという大胆な挑戦です。

長谷川さんは、これまでの金融業界での経験を最大限に活用しています。ファンド時代に企業の経営に深く関わり、年齢や立場の違う多くの人々と対話を重ねて成果を上げてきた経験は、スカウト部での選手評価やコミュニケーションにも生かされています。「才能だけでなく、選手の人間性や取り組む姿勢を見極めることが重要」と彼は語り、今の実力だけでなく将来性を重視する姿勢を貫いています。

長谷川さんが目指すのは、単なる成果を上げるスカウトチームではありません。他球団や競技を問わず参考にされるような、模範的な組織を作り上げることにあります。そのためには、優れた選手を見極める力だけでなく、組織全体の人間力を高めることが求められると説きます。そして、彼の挑戦はスポーツ界だけにとどまらない可能性を秘めています。「この手法がアマチュアスポーツや教育現場にも広がれば、日本の未来に影響を与えることができる」と語る彼の視線は、常にグラウンドの向こうを見据えています。

このような異色のスカウト部長の挑戦には、SNS上でも大きな注目が集まっています。「野球経験がなくても球界に貢献できる道があるなんて希望を感じる」「異業種出身者だからこその視点が新鮮」といった称賛の声が相次ぎ、改革の波を予感させています。DeNAが繰り広げるこの新たな挑戦が、スポーツ界全体にどのような影響を与えるのか、ますます目が離せません。

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