「キャプテン翼」と「ゴルゴ13」に学ぶ、永遠に輝き続けるキャラクターの創造術

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「漫画家を引退します」と高橋陽一さんが発表したのは、2024年4月、雑誌「キャプテン翼マガジンvol.20」の連載終了後のことでした。しかし、この言葉が示すのは「キャプテン翼」の物語が終わるわけではなく、漫画制作の新たな形への挑戦を意味していました。高橋さんは、これまでのペン入れによる完成原稿ではなく、鉛筆描きの下書きにあたる「ネーム」を週1回ウェブ連載するという新しい手法を選びました。

漫画家生活40年を超え、現在64歳の高橋さんは体力的な限界を感じつつも、ストーリーは次々と頭に浮かんでくるといいます。しかし、これまでのペースでは物語が進まず、20年後でも翼の物語が完結しない可能性があると考えました。ネームであれば制作を加速でき、さらにデジタル技術を活用することで視覚的な美しさも保てます。必要があればペン入れは他のクリエイターに任せることで、物語をさらに広げられる未来が見えてきたのです。

永遠に愛されるキャラクターを創り出すという課題は、高橋さんだけのものではありません。漫画界では「ゴルゴ13」のように、分業体制で物語を継続させる取り組みも注目されています。1968年に連載を開始した「ゴルゴ13」は、2021年に原作者のさいとう・たかをさんが亡くなった後も、彼のプロダクションがその世界観を守りながら制作を続けています。分業制を早くから導入したさいとうさんの先見性により、現在もプロフェッショナルたちがシナリオや作画を分担し、ゴルゴの冷徹な表情や物語の魅力を保っています。

さらに、AI技術の活用も新たな可能性を生んでいます。2023年には、手塚治虫の名作「ブラックジャック」の新作制作を目指す「TEZUKA2023」プロジェクトが話題になりました。AIが提案する膨大なシナリオ候補を人間が選び、細部を作り込むことで、手塚風の新しい物語を創り上げる試みです。このプロジェクトでは、AIを「壁打ち相手」として使い、再生医療などの最新トピックを取り入れながら、新たな手塚作品を生み出しました。

SNSではこれらの挑戦に対し、「キャラクターの魅力を保ちながら新たな方法で継続する発想が素晴らしい」「AIとの共創が未来の文化を広げる」といったポジティブな意見が多く寄せられています。一方で、「人間の手で描かれるからこそ心に響くのでは」といった、伝統的な手法へのこだわりを支持する声も少なくありません。

永遠に輝き続けるキャラクターの創造には、制作意欲と技術革新、そして未来を見据えた柔軟な発想が求められます。高橋さんやさいとうプロダクション、手塚プロジェクトの取り組みは、漫画だけでなく、他の芸術分野やエンターテインメントにも応用可能なヒントを与えてくれるでしょう。物語を紡ぐその手が、これからも夢と希望を広げていくことを願わずにはいられません。

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