2019年6月4日、スイスのジュネーブにある世界貿易機関(WTO)本部にて、ロベルト・アゼベド事務局長が日本経済新聞の取材に応じ、日本が主導する電子商取引(EC)に関する国際的なルール作り、通称「大阪トラック」の進展に強い期待を表明されました。これは、同年6月に大阪で開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、この新しい国際ルールの枠組みが構築されることを願うというもので、現代のデジタル経済における日本の役割の重要性を浮き彫りにしています。
アゼベド事務局長は、「大阪トラック」を「すばらしい取り組み」と称賛し、歓迎する姿勢を示されています。現在、各国・地域では、個人情報や知的財産といった重要なデータの保護に関するルールが個別に発展しており、このままでは世界の電子商取引の仕組みがバラバラになり、国際的な連携が困難になるという懸念があります。この「大阪トラック」は、そうしたデータの分断化を防ぎ、国際的な協調を促進する重要なきっかけになるものと期待されているのです。
私の考えでは、現代の貿易において、データはまさに「新たな資源」と言えるでしょう。国境を越えるデータの流れを適切に管理するためのルールが、これまでのモノの貿易を重視してきたWTOの中で遅々として進まない現状は、非常に深刻な問題です。農業分野など、従来の貿易ルールを優先したいと考える発展途上国の存在が、このデジタル分野の議論を停滞させている一因と考えられます。しかし、日本をはじめとする有志国が先行して国際的な枠組みを作ろうとする動きは、未来の貿易の基盤を築くために不可欠な一歩だと強く感じます。
この有志国によるルール策定の動きについて、アゼベド事務局長は、「将来的にWTOが交渉の舞台になる」との見解を示しており、先行して作られたルールが、ゆくゆくはWTOの正式なルールとして格上げされる可能性を示唆されました。これは、日本などが主導する「大阪トラック」が、単なる一部の国々の取り決めにとどまらず、世界共通の規範となる可能性を秘めていることを意味します。
緊迫する貿易摩擦と日本の役割への期待
また、事務局長は、米国を中心として激化する貿易摩擦についても言及されています。この摩擦は「世界経済・貿易を減速させ、すべての人にとってマイナスの影響を与える」と強い懸念を表明されました。SNSなどでも、この貿易摩擦のニュースが流れるたびに、世界経済の不透明感や自国経済への影響を不安視する声が非常に多く見受けられます。
事務局長は、米国の通商当局とは意思疎通ができているとしながらも、「可能な解決策について、助言することはできる」と述べており、G20サミットの場を通じて、米中などの二国間対話を間接的に支援していきたいという意向を明らかにされました。紛争処理システムの円滑化など、WTOの組織そのものの改革においても、日本が引き続き積極的な役割を果たすことを強く望んでいるようです。電子商取引のルール作りだけでなく、貿易摩擦の解決においても、日本が国際的な議論のキーパーソンとなることが期待されています。