経路検索サービスを提供するナビタイムジャパン(東京都港区)が、暑さを避けた移動をサポートする新機能を次々と導入しています。スマートフォン向けの乗り換え検索アプリ「乗換NAVITIME」では、屋内移動を優先する経路を表示する機能を追加しました。30度以上の真夏日が増える中、熱中症リスクを軽減しながら快適に移動できる選択肢を提案しています。
この「屋内優先」機能は、出発地から目的地までの経路検索時に表示される条件タブの一つとして利用できます。通常の「時間が短い」「運賃が安い」などの条件に加え、「屋内優先」を選ぶと、屋外での移動を極力減らした経路が優先的に表示されます。例えば、東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅からJR総武線浅草橋駅へ向かう場合、屋外での徒歩移動が発生する経路よりも、JR東京駅や秋葉原駅を経由する屋内主体のルートが優先される仕様です。
このような配慮は、気象庁の統計にも裏付けられています。2023年7月の日本国内平均気温は平年より2.16度高く、観測史上最高を記録しました。同月には熱中症による救急搬送者数が前年同月比で約1.2倍の43,195人に達するなど、暑さ対策の重要性が増しています。さらに、突然のゲリラ豪雨も頻発する中、屋外を避けたいというニーズはますます高まっています。
ナビタイムジャパンは、この需要を受け、2023年8月に有料会員向け機能として「日陰を優先した経路検索」を提供開始しました。この機能の反響は大きく、2024年7月後半の検索数は前半の約2倍に増加しています。さらに2024年8月には、自治体が指定する「クーリングシェルター」や「クールシェアスポット」など、涼める施設の情報を地図上に表示する機能を追加しました。関東地方だけでも4,200以上の施設が掲載されており、徒歩経路の検索時にも坂道が少ないルートを探せるようになるなど、多様な需要に対応しています。
これらの機能の多くは無料で利用できるものの、詳細な日陰ルートや徒歩経路を提供する機能は有料会員限定となります。月額料金はアプリストア決済で400円のプレミアムコースが設定されています。
SNSでは、「暑い日の外出が楽になった」「日陰ルートや涼めるスポットを教えてくれるのが便利」といった声が多く寄せられています。一方で、「有料機能の無料化を期待する」といった意見も見られます。
高齢化が進む一方で、公共空間のバリアフリー化には地域差があり、移動しやすさは必ずしも均一ではありません。ナビタイムジャパンの取り組みは、多様な個人のニーズに応えることで、移動の選択肢を広げ、より快適な外出体験を提供しています。猛暑や天候の変化が続く中、こうしたサービスの進化が、生活の質を向上させる重要な一歩となるでしょう。