2019年07月17日現在、日本列島は毎年のように襲い来る自然災害の脅威に直面しています。現在行われている参議院議員選挙においても、どのように国民の命を守るのかという「防災・減災」は、有権者が最も注目する争点の一つと言えるでしょう。
特に中部地方の沿岸部では、近い将来の発生が懸念される「南海トラフ地震」への対策が急務です。これは静岡県の駿河湾から九州沖へと続く海溝(トラフ)を震源とする巨大地震で、発生すれば広範囲に甚大な被害をもたらすと予測されています。
SNS上では「コンクリートの堤防だけで本当に守れるのか」「避難所の設備をもっと充実させてほしい」といった切実な声が溢れています。各候補者はインフラ整備を訴えますが、自治体の財政には限界があるのが現実ではないでしょうか。
「命の山」マウンドと迫り来る津波の現実
愛知県田原市は、美しい波が寄せるサーフィンの聖地として知られていますが、一方で最大21メートルの津波が襲うリスクを抱えています。最悪のシナリオでは約1500人の犠牲者が出ると推定されており、市は対策を急いでいます。
その具体策の一つとして、2018年10月に「マウンド」と呼ばれる人工の高台が完成しました。これは盛土をして造られた避難施設で、海抜15メートルの頂上には約500人が避難可能です。階段だけでなくスロープも完備され、高齢者への配慮もなされています。
避難した方々が数日間過ごせるよう、マンホール型のトイレや備蓄用のベンチも備わっている点は非常に心強いものです。近隣に住む76歳の女性も、これまでは遠くの避難所へ行くのが困難だったため、身近な場所にこの施設ができたことを歓迎しています。
しかし、こうした「ハード面」の整備には莫大な費用が伴います。田原市は2022年にも新たな避難タワーを建設予定ですが、総工費は10億円を超える見込みです。国からの補助金はあるものの、地方自治体にとっては重い負担となっているのが実情です。
水害対策の進化とボランティアが繋ぐ希望の輪
地震だけでなく、豪雨災害への備えも待ったなしの状況にあります。2018年07月の西日本豪雨では、岐阜県関市の津保川が氾濫し、多くの住宅が浸水被害に遭いました。この悲劇を繰り返さないため、県は新たなテクノロジーの導入を進めています。
注目すべきは「危機管理型水位計」の設置です。これは河川の増水を監視する特化型の観測機器で、従来の装置より安価に設置できるメリットがあります。2019年03月までに161カ所に設置され、ネットで誰でも川の状態を確認できるようになりました。
さらに2021年の夏までには350カ所まで増設される計画であり、避難の判断を住民自らが行える環境が整いつつあります。インフラによる防御も大切ですが、こうした「情報の見える化」こそが、逃げ遅れを防ぐ鍵になるはずです。
一方で、ハードウェアだけでは補えない部分を支える「人の力」も芽生えています。2018年09月には、愛知・岐阜の有志によって「チーム中濃」というボランティア団体が結成されました。彼らは被災地へ駆けつけ、瓦礫の撤去や物資運搬に汗を流しています。
編集者が見る「防災」の真の論点
今回の参院選において、各政党は防災を重要政策に掲げていますが、年金や消費税といった他の議論の影に隠れてしまっている印象を拭えません。命に直結する問題であるにもかかわらず、どこか優先順位が低くなってはいないでしょうか。
NPO法人「レスキューストックヤード」の栗田代表理事が指摘するように、立派な施設を造るだけでなく、それを使いこなす「人」や「地域コミュニティ」を育てる政策こそが、今求められている真の防災対策だと私は考えます。
予算が限られているからこそ、コンクリートに頼るだけでなく、住民同士が助け合える仕組み作りへの投資を加速させるべきです。私たちが一票を投じる際には、その候補者が「形あるもの」以上に「地域の絆」を重視しているかを見極める必要があります。
SNSでは「政治家は選挙の時だけ良いことを言う」という冷ややかな意見も見受けられますが、私たちの命を守る舵取りを任せるのは他ならぬ自分たちです。2019年の夏、この国の未来と安全を誰に託すのか、今一度深く考えるべき時でしょう。