2023年に続く全国的な猛暑が、日本の米市場に思わぬ変化をもたらしています。かつて「やっかいどう米」と揶揄されていた北海道産米が、冷涼な気候を武器に注目を集めています。猛暑の影響で全国的に米の品質が低下する中、道産米の優れた品質が改めて評価されています。
新潟県の米農家が特に苦しんでいるのは、2023年夏の記録的な暑さによるものです。同県の8月の平均気温は30度を超え、前年より4度も高くなりました。この影響で白濁した「白未熟粒」が増加し、品質が低下。新潟県産米の1等米比率は、2022年の73.9%から2023年には14.8%と大幅に落ち込みました。秋田県など他の産地でも同様の状況が見られ、全国平均の1等米比率は60.9%と17.7ポイントも下がりました。
そんな中、北海道産米がその存在感を高めています。2023年産の道産米の1等米比率は87.4%と全国平均を大きく上回り、全国5位を維持しました。北海道も暑い夏を迎えましたが、被害は比較的少なく、高い品質を保っています。特に「ゆめぴりか」や「ななつぼし」は日本穀物検定協会の食味ランキングで14年連続「特A」を獲得し、そのブランド力を裏付けています。
道産米の市販向け比率は、1990年代の30%から2022年には70%に増加し、販売量も約20万トンと30年で2倍になりました。これには、生産者や流通業者が厳しい検査基準を設けたり、品質向上のためのコンテストを開催したりする努力が背景にあります。また、タレントのマツコ・デラックスさんを起用したプロモーションも成功を収めています。
北海道産米が品質を向上させた背景には、独自の品種改良があります。本州のコシヒカリなどは北海道の冷涼な気候では実らないため、日照時間ではなく気温の上昇で穂を出す特性を持つ品種が開発されました。この冷涼な気候こそが、道産米の競争力の源泉となっています。
一方、ホクレン農業協同組合連合会は、急な需要増には慎重な姿勢を示しています。「一時的な需要には対応せず、長期的な取引先を重視する」という方針で、米余りを防ぎながら持続可能な供給体制を構築しようとしています。
猛暑が続く中で、北海道産米はその冷涼な気候を活かし、品質とブランド力で新たな需要を開拓しています。日本国内外でその価値がさらに高まることが期待されます。