2024年8月22日、名古屋市の東山動植物園が国内で唯一「現代の恐竜」とも称されるコモドオオトカゲの飼育展示をスタートさせました。世界最大級のトカゲであり、インドネシアに生息する希少種であるコモドオオトカゲ。絶滅危惧種に指定されている彼らの生息数は、わずか約3,500頭とされています。今回展示された13歳のオス、タロウは、全長約2.7メートル、体重50キログラムの迫力ある姿で訪れた観客を魅了しました。
この希少なコモドオオトカゲの飼育が実現したのは、名古屋市による6年にわたる粘り強い誘致活動のおかげです。2018年に河村たかし市長がインドネシアのタマン・サファリ動物園を訪問したことをきっかけに、名古屋市は誘致に動き始めました。しかし、インドネシアからの直接的な移送が困難を極めたため、シンガポール動物園と日本の上野動物園との協力体制が大きな転機となりました。タロウはシンガポール動物園で生まれましたが、母親はかつて上野動物園で飼育されていたコモドオオトカゲ。こうした縁を通じて、タロウは名古屋で新しい暮らしをスタートさせたのです。
東山動植物園では、この新しい展示に向け、旧ゴリラ舎を急遽改装して受け入れ体制を整備しました。今後はメスの誘致や繁殖計画にも取り組む予定であり、さらに2027年度には専用の飼育施設も完成する見込みです。飼育を担当する湯川正幸さんは、「いずれタロウにパートナーを迎え、繁殖を目指したい」と話しています。
この取り組みは、単なる展示にとどまらず、コモドオオトカゲの保全活動にもつながっています。タロウの飼育施設には、「コモドオオトカゲの今」と題された看板が設置され、生息地での乱獲や環境破壊がいかに彼らの未来を脅かしているかが伝えられています。インドネシア政府が進める保全活動の重要性にも触れ、訪れる人々に生態系の保護への関心を促しています。
東山動植物園は、国内最多の飼育種数を誇り、絶滅危惧種の保護にも力を入れている施設です。2022年度の入場者数は230万人を超え、国内の動物園としては上野動物園に次ぐ規模を誇ります。園長補佐の永田祐二氏も、「タロウの登場がさらなる入場者増加につながることを期待している」と語っています。
この取り組みはSNSでも大きな反響を呼び、「現代の恐竜が名古屋に!」「タロウに会いたい!」といったコメントが多数寄せられています。観光資源が限られる名古屋において、東山動植物園は地域の魅力を発信する重要な拠点です。来園者、行政、運営が一体となり、希少動物が安心して暮らせる環境を守っていく努力が求められています。