2022年秋に発生した鳥インフルエンザの影響で一時停滞していた日本産鶏卵の輸出が、2024年に入り復調の兆しを見せています。今年1月から6月の輸出量は、前年同期比で29%増加し、1万404トンに達しました。衛生管理を徹底した高品質な鶏卵を武器に、海外市場で「TAMAGO」として日本産鶏卵を売り込む努力が続いています。
2024年8月15日から17日にかけて香港で開催された食品関連イベントでは、日本産卵を使った温泉卵や親子丼などの試食メニューが登場。現地の外食関係者が集まり、その品質に感嘆する様子が見られました。衛生管理が徹底された日本産卵は、海外では殻に汚れが付着した状態で店頭に並ぶ卵が多いこともあり、「安心・安全」という点で大きなアピールポイントとなっています。
山形県天童市の半沢鶏卵は、桜やサクランボの木のチップで燻製した半熟卵「スモッち」を香港の外食店向けに販売しています。この製品は燻製により消費期限が2週間から3週間に延びるほか、空輸を活用して鮮度を保ちながら輸出されています。また、愛知県岡崎市の三栄鶏卵が手掛ける「まんげつ濃厚卵」は、特別な飼料で育てた鶏から生まれる濃厚な味わいが特徴で、毎週中部国際空港からシンガポールへ空輸されています。現地のスーパーでは6個入りで約1,100円の価格ながら、売れ行きは好調。高級飲食店やミシュラン星付きレストランでも採用されるなど、高い評価を得ています。
埼玉県寄居町のナチュラファームは、動物福祉(アニマルウェルフェア)に配慮した卵を香港の高級小売店で販売しています。ケージを使わず鶏が自由に歩き回れる環境を整えたことで、ストレスの少ない鶏が産む高品質な卵を実現しました。6個入り約925円と高価格帯ですが、ファンを増やしつつあります。
日本では生卵を食べる文化が一般的ですが、海外では加熱調理が主流のため、全農は香港で鶏卵加工会社を設立。温泉卵など加工品の販売を開始し、外食店にも卸しています。生卵そのものだけでなく、日本の調理技術を活かした製品で市場を広げています。
国内では人口減少に伴い卵の消費量が減少する見通しがあり、輸出による販路拡大は鶏卵農家にとって重要な課題です。SNSでも「日本の卵が世界でも高評価」「TAMAGOの国際進出に期待」といった声が寄せられており、海外での成功が日本産卵の未来を切り開く鍵となるでしょう。高品質と工夫を武器に、「TAMAGO」がさらに世界中に広がる日が期待されます。