福岡県糸島市に位置する農産物直売所「伊都菜彩(いとさいさい)」が、全国の直売所の中でトップクラスの集客力を誇り注目を集めています。2007年にオープンしたこの直売所は、新型コロナウイルスの影響で一時的に売上が落ち込んだものの、2023年度には販売高約43億円という過去最高を記録しました。1日の平均来客数は3000人を超え、週末には大分や熊本、山口など九州各地からも多くの人が訪れ、昼過ぎには多くの商品が売り切れるほどの人気ぶりです。
「伊都菜彩」が多くの買い物客を惹きつける理由のひとつは、圧倒的な鮮度です。前日や当日の朝に収穫された新鮮な農産物が、生産者によって直接届けられるため、通常のスーパーとは一線を画しています。しかし、鮮度だけではなく、直売所の仕組みそのものにも秘密があります。
生産者が何をどれだけ出荷するかを自分で決められる仕組みが整っており、売れ残った場合には持ち帰る必要があります。これにより、生産者は市場の需要を見極める努力をし、効率的に出荷量を調整しています。特に、レジでバーコードをスキャンすることで売上データが即座に収集され、出荷者にリアルタイムでフィードバックされるシステムが効果を発揮しています。また、売り切れ商品についての情報はスタッフによって店内に掲示され、翌日の出荷計画や翌年の生産計画に役立てられています。
さらに、伊都菜彩が提供する商品の幅広さも人気の大きな要因です。毎日700~800品目が並び、時期によって異なる品ぞろえは、都市近郊型農業が盛んな糸島市の特性を反映しています。大規模な農地では難しい多品目栽培が、この地域の農業の特徴となっており、多様な農産物が棚を彩っています。
生産者は約1500人に上り、その中には高齢農家や女性農家も多く含まれています。特定の品目に特化した生産効率や価格競争に依存せず、多様な担い手が活躍できる仕組みが地域の農業を支えているのです。この取り組みは、農業の新しい形を模索する上で重要なモデルとなっています。
SNSでも「糸島の新鮮野菜が手に入る!」「旅行で伊都菜彩に寄るのが楽しみ」といったコメントが多数寄せられ、観光地としても注目を浴びています。糸島市の豊かな自然と地域農業の魅力が、この直売所を通じて全国に発信されているのです。
「全国ナンバーワンの直売所であり続けたい」という生産者の声には、地域の農業に対する誇りとやる気が込められています。この直売所は、生産者と消費者をつなぐだけでなく、日本の農業が抱える課題へのひとつの解決策を示す場としても、今後さらに注目されるでしょう。