京都名物「八ッ橋」の魅力を探る―多彩な味と曖昧な歴史が紡ぐ伝統菓子の今

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京都を代表するお土産として、多くの人が真っ先に思い浮かべる「八ッ橋」。修学旅行生から年配の方まで幅広い年代に愛され続けていますが、その製造に携わる組合には14社が加盟し、それぞれが独自のこだわりで多彩な八ッ橋を生み出しています。

JR京都駅の中央改札口近くにある「おみやげ小路 京小町」では、2023年8月にリニューアルオープンした店舗に八ッ橋を扱う4つの店が並びます。横浜から観光に訪れた夫婦は「八ッ橋メーカーがこんなにあるとは知らなかった」と驚きつつ、ニッキの風味が異なる商品をネット情報を頼りに選んだと話していました。こうした店舗での選択肢の多さが、訪れる人々に新たな発見を提供しているようです。

八ッ橋の味わいには、各社の個性が光ります。例えば、聖護院八ッ橋総本店の専務、鈴鹿可奈子氏は「もちもち感を保ちつつ、歯応えも残した生地を目指している」と語ります。一方、本家八ッ橋西尾は、夏にはラムネや夏みかん、秋には焼き芋や栗など季節限定商品を加え、年間30種類ものフレーバーを展開。井筒八ッ橋本舗では、改良を重ねた製造機械でオーブン焼きの技術を進化させ、手焼きよりも薄く軽い仕上がりを実現しています。

もともと八ッ橋といえば焼き菓子を指しましたが、戦後に登場した生八ッ橋が現在の主流となっています。この転換点となったのが、生地に粒あんを包んだ三角形のスタイルの商品化。これが大ヒットし、各社が競うように類似商品を展開したことで、今日の生八ッ橋の人気が確立されました。

八ッ橋の起源は、江戸時代にその原型が存在した可能性があるものの、文献に基づく正確な歴史は曖昧です。この曖昧さが、創業年代を巡る論争の引き金ともなりましたが、井筒八ッ橋本舗の津田佐兵衛会長兼社長は「歴史よりも美味しい菓子を作ることが大切」と語っています。

SNSでは「八ッ橋の種類がこんなに多いなんて驚き!」「食べ比べてお気に入りを探したい」といった声が広がり、現代でもその魅力は衰えるどころか新たな広がりを見せています。曖昧な起源すら魅力に変え、14社それぞれの努力と工夫が八ッ橋の人気を支えているのです。京都を訪れた際には、ぜひ店ごとの味を比べて自分だけのお気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか。

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