2025年1月2日、カマラ・ハリス副大統領はペンシルベニア州ピッツバーグでバイデン大統領と共に演説を行い、日本製鉄によるUSスチール買収計画について初めて自らの立場を明らかにしました。ピッツバーグはUSスチールの本社がある都市で、同計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)の本部も位置しており、この発言は地域にとって大きな注目を集めました。ハリス副大統領は「USスチールはアメリカ国内で所有され、運営されるべきだ」と述べ、バイデン大統領が今年3月に示した同様の考えを踏襲する形で買収に反対する姿勢を鮮明にしました。
演説ではさらに、USスチールの歴史的な役割を強調し、「米国の鉄鋼業は国家にとって欠かせない存在であり、私は常に鉄鋼労働者たちの味方であり続ける」と語りました。この発言には、2024年11月に控える大統領選を見据えた労働者層への支持拡大の狙いが見え隠れします。
一方、日本製鉄は翌日の1月3日に声明を発表し、「米国の労働者や地域社会、国家安全保障に利益をもたらす」と自信を示しました。同時に、2024年8月29日に発表されたUSスチールの製鉄所への13億ドル(約1900億円)以上の追加投資計画に触れ、「この規模の投資を実現できるのは日本製鉄だけだ」と強調しました。
民主党は伝統的に労働組合を支持基盤としており、バイデン大統領も2024年5月にUSW本部で行った演説で「USスチールは1世紀以上にわたり米国の象徴であり続けてきた。この企業は今後もアメリカ企業であり続けるべきだ」と発言し、買収に否定的な見解を明確にしていました。
さらに、共和党のトランプ前大統領も同計画に強い反対を示しています。2024年8月末には「私が再選すれば、この買収は阻止する」と公言し、中止命令を出す可能性を明らかにしました。この発言は支持者の間で大きな反響を呼び、SNS上では「国家の象徴を守るべきだ」という意見や「鉄鋼業界がグローバル化する中、現実的な対応が必要だ」という議論が広がっています。
今回の買収問題は単なる企業間の取引にとどまらず、米国の鉄鋼業界の未来、さらには労働者の生活や地域社会にまで影響を及ぼす重大なテーマとなっています。バイデン政権とハリス副大統領の対応が、今後の選挙や米国経済にどのような影響を与えるのか、目が離せません。