時代を超える魅力と価値:ビンテージジーンズが熱い理由

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近年、ビンテージジーンズの人気が再燃し、その価格が驚くほど高騰しています。2024年6月の「Yahoo!オークション」での男性向けビンテージジーンズの平均落札価格は1万9556円と、10年前の1.9倍に達しました。さらに、1000万円を超える商品が登場するなど、かつてない盛り上がりを見せています。この背景には、1990年代に古着ブームを体験した40~50代の男性たちの情熱が大きく影響しています。彼らが当時手が届かなかった憧れのジーンズを今になって手に入れ、かつての夢を追体験しているのです。特に人気のサイズは、中年男性が履きやすい32~34インチ。この市場の動きは、ノスタルジーが生む経済効果を如実に示しています。

東京・原宿の古着店「マービンズ」では、海外有名ブランドのジーンズがずらりと並び、その中でも「リーバイス」や「リー」といった知名度の高いブランドが売れ筋です。店頭には、1906年製の「リーバイス501XX」など、貴重なビンテージもあります。このジーンズは、118年という時を経た今でも絶妙な色落ちとサイズ感を持ち、1288万円という価格がついていました。「501」というモデルは特に人気で、年代や色合い、保存状態がその価値を決めます。新品未使用のまま残った「デッドストック」と呼ばれる品も高額取引の対象になりがちです。

この現象は男性だけでなく、若い世代や海外のバイヤーにも波及しています。東京都在住の23歳男性は、「使い込まれた風合いと豊富な種類に魅力を感じる」と語ります。また、円安の影響で日本の古着価格が海外に比べて割安に映ることから、外国人バイヤーも日本の古着店に訪れるケースが増加しています。このように、国境を超えた需要が日本のビンテージジーンズ市場をさらに活性化させているのです。

一方で、女性市場はまだ発展途上にあります。2024年6月のヤフオクでの女性向けビンテージジーンズの取引数は47件と男性向けの1割未満にとどまっていますが、渋谷の「ザニーム」のように女性向けに特化した店舗が登場し、今後の成長が期待されています。人気が高まれば、女性向けでも価格の上昇が見込まれるでしょう。

ジーンズは1873年にリーバイ・ストラウス社が誕生させました。この年は日本で渋沢栄一らによる第一国立銀行(現みずほ銀行)が設立された年でもあり、偶然ながらジーンズと日本経済の象徴が同じ歴史のページを刻んでいます。当時、ゴールドラッシュで金鉱労働者の声を反映して作られた丈夫なズボンは、時を経てファッションアイテムとしての地位を確立しました。

ビンテージジーンズの魅力は、ただ所有するだけでなく、自分で「育てる」という楽しみにもあります。年月と共に風合いや色落ちが深まり、唯一無二のアイテムになるのです。そのプロセスは、人間が年齢を重ねて味わいを増すのとどこか似ています。新しいジーンズでも自分なりの育て方を追求すれば、いつかそれも「ビンテージ」になるかもしれません。こうしたストーリーを紡ぐビンテージジーンズが、これからも時代を超えて愛され続けるのは間違いないでしょう。

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