ブラジルでX(旧Twitter)が停止:法的対立とマスク氏の反応

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ブラジルの最高裁判所第1法廷は、2024年9月2日、イーロン・マスク氏が会長を務めるソーシャルメディアプラットフォーム「X」(旧Twitter)の国内利用を禁止する判決を全会一致で支持しました。この決定は、同国のアレシャンドレ・モラエス裁判事が8月30日に下した命令に基づくもので、Xが偽情報の拡散防止や法的命令への対応を怠ったとされることが背景にあります。

モラエス裁判事は、Xが法廷命令を無視し続けていることを指摘し、サービス停止を命じるだけでなく、仮想プライベートネットワーク(VPN)を利用してアクセスを試みた個人や企業には、1件あたり5万レアル(約130万円)の罰金を科すとしました。また、Xに対しては1830万レアル(約4億8000万円)の罰金を支払うまでサービス停止命令を維持することが決定されました。

この裁定の背景には、モラエス裁判事が進めている「デジタル民兵」と呼ばれる偽情報拡散者の取り締まりがあります。特に右派のボルソナロ前大統領やその支持者が投稿する過激な発言を厳しく監視する姿勢が注目されています。一方で、Xはマスク氏が2022年に買収して以降、投稿管理(コンテンツモデレーション)の仕組みを大幅に縮小しており、この方針転換がブラジル政府との対立を深めた一因とされています。

マスク氏はモラエス裁判事の命令に強く反発し、罰金の支払いも拒否してきました。さらに、ブラジル国内の事業所を閉鎖する動きに出ながらも、サービス自体は継続する意向を示していました。しかし、モラエス裁判事はこれを「ブラジルの法制度を軽視する行為」と判断し、強硬策に踏み切ったのです。

現在、ブラジルではXが利用できない状態が続いており、モラエス裁判事は米国のAppleにもXアプリをApp Storeから削除するよう要求しています。ただし、2024年9月2日時点で、Appleはこの要求に応じていません。また、当初削除を求められていたVPNアプリについては、その後の要請が撤回されました。

SNS上ではこの件が大きな話題を呼び、「プラットフォームの自由と規制の境界を問う重大な問題だ」「マスク氏の姿勢は企業としての責任を軽視しているのではないか」といった意見が飛び交っています。一方で、「国家の介入がSNSの自由を侵害している」という懸念の声も見られ、議論は国際的な広がりを見せています。

この一件は、SNSプラットフォームが直面する規制や責任、そして国家との関係性について考える重要な機会となるでしょう。特に、偽情報の拡散を防ぐ取り組みと表現の自由のバランスをどのように取るべきか、世界的に注目が集まる事例と言えます。

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