2024年9月現在、首都圏の中学受験はますます熱を帯びています。大手4模試(サピックス、首都圏模試、日能研、四谷大塚)の6〜7月実施分で受験者数が昨年同期比3.4%増加したことが公表されました。一方で、1都3県の小学6年生人口は前年比0.3%減少しており、受験率がさらに上昇しているのが明らかです。この背景には、少子化にもかかわらず教育熱が衰えない都市部特有の現象があると言えるでしょう。
しかし、注目すべきは受験者数の増加がすべての学校に均等に反映されているわけではない点です。特に男子御三家(開成、麻布、武蔵)や女子御三家(桜蔭、女子学院、雙葉)といった難関校の第一志望者数は、前年と比べて減少傾向が見られます。例えば、開成の志望者数はサピックス模試で92%、四谷大塚模試で110%と対照的ですが、両模試を合計すると97.7%とやや減少。麻布と武蔵については、両模試でいずれも76%前後と顕著に減少しています。女子御三家も同様に減少基調で、桜蔭や女子学院、雙葉はいずれも90%台前半に留まりました。このような変化から、難関校の志望者層が分散している可能性が示唆されます。
その一方で、注目を集める学校も現れています。特に慶應普通部は前年同期比115%と大きく志望者を増やし、市川(116%)や聖光学院(111%)といった千葉・神奈川の有力校も増加傾向を見せました。さらに、聖光学院はサピックス模試で第一志望者数ランキングを10位から6位に押し上げ、渋谷教育学園幕張(渋幕)も6位から3位に上昇。これらの学校は、東京大学合格実績という確かな指標がその人気を後押ししていると言えます。特に聖光学院は現役合格率で開成を上回る成果を挙げ、渋幕も60〜70人台の東大合格者を安定して輩出している点が注目されています。
一方で、志望者数が減少している学校でもその人気が衰えたわけではありません。難関校が依然として高い支持を維持していることから、受験生の志望校選びにおいて「合格可能性」や「校風」のような実質的な要素が重視されつつあるのかもしれません。中堅校の中でも吉祥女子が前年とほぼ同水準を保っていることや、鴎友が86.8%に留まったことからも、多くの学校が特色を持ちながら選択肢として見直されている様子が伺えます。
全体的に受験者数が増加する一方、難関校への集中が和らぐことで、中堅校に志望者が集まり混雑する状況が見込まれます。しかしこれは、難関校を志す受験生にとって、失点のリスクが軽減されるという前向きな要素にもなり得るでしょう。今後の中学受験では、学校の個性や魅力をいかに伝えるかが鍵となりそうです。TwitterやInstagramといったSNSでも、「慶應普通部が熱い」「聖光学院の勢いが止まらない」といった声が多く、受験生や保護者の注目が一層高まっているのが印象的です。
中学受験を取り巻く環境は変化の真っ只中にありますが、その中でも学びや将来への期待を抱く家庭の姿勢は揺るぎません。志望校選びの際には、こうしたトレンドも考慮しつつ、自身に合った学校を見つけることが重要です。