猛暑の避難所生活を体験して見えた課題と対策:災害に備えるリアルな訓練

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災害時、猛暑の中でエアコンのない避難所で生活する現実を疑似体験する訓練が、2024年7月27日から28日にかけて大阪府八尾市の小学校体育館で実施されました。この訓練は、地震や台風、豪雨といった災害が気候を選ばずに襲う現実を見据えたものです。特に8月8日に南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたこともあり、避難後の命を守る対策に注目が集まっています。

避難所・避難生活学会が主催したこの1泊2日の訓練には、自治体職員や医療従事者、研究者ら約70人が参加しました。設定は「大規模災害が発生し、小学校の体育館が避難所として使われる」というもの。電気や水道は使えるものの、暑さ対策として用意されたのは扇風機とスポットクーラーだけでした。夕方でも室内の気温は36度を超え、湿度も高いため、参加者は息苦しいほどの熱気に包まれながら活動を続けました。

夕食には、水やお湯を注ぐだけで食べられるアルファ化米が提供されましたが、床に座って食べるスタイルに、参加者から「これが毎食続いたら辛い」との声が上がりました。さらに、夜間には簡易シャワーで汗を流すことができたものの、気温は午後11時になっても30度を下回らず、湿度も70%以上でした。段ボールベッドや床に敷いたマットを利用したものの、場所によって暑さの感じ方が異なり、快適とは程遠い環境だったといいます。

2022年9月時点で、全国の公立小中学校の体育館に冷房が設置されている割合はわずか11.9%。災害発生後に緊急で設置するとしても、数日から数週間はかかると予想されます。この現状について、信州大学の倉橋大海さんは「猛暑の中で数日間避難所生活を続けることを想像すると、非常に厳しい」と感想を述べています。

訓練を通じて、さらなる課題も明らかになりました。例えば、就寝時に体育館の扉を開放することで外気を取り込む対策をしましたが、武庫川女子大学の竹本由美子准教授は「訓練だから安心できるが、実際の避難所で防犯面の不安が残る」と指摘しました。また、中京大学の松本孝朗教授は「災害時には日中に自宅を片付けに行く住民や避難所で過ごす高齢者への配慮が必要だ」と述べ、異なるニーズへの対応の重要性を強調しました。

参加者からは「少しの工夫で避難生活の質を向上できることが分かった」「支援者側として必要なサポートが明確になった」という声が多く聞かれました。特に、段ボールベッドメーカー「Jパックス」の水谷嘉浩社長は「ライフラインが完全に止まる状況を想像すると、避難所生活の厳しさがさらに実感される」と語り、支援側としての視点の大切さを訴えました。

SNSでは「猛暑の避難所生活を想像するだけで恐ろしい」「エアコン設置が緊急課題」といった声が広がり、災害時の避難所対策に対する関心が高まっています。猛暑下での避難所生活のリアルを体験するこの訓練は、命を守るためにどのような準備が必要かを考える貴重な機会となったと言えるでしょう。

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