2024年9月3日、環境省は世界自然遺産に登録されている鹿児島県・奄美大島において、外来種であるマングースの根絶を達成したと宣言しました。これまでにマングースが在来種の生態系に深刻な被害を与えてきた中、今回の成果は奄美大島だけでなく世界的にも貴重な事例として評価されています。
マングースが奄美大島に持ち込まれたのは1979年のこと。当時、猛毒を持つヘビ「ハブ」対策として約30匹が放たれました。しかし、ハブは夜行性であるのに対し、マングースは日中に活動するため、両者の接触はほとんどありませんでした。その結果、ハブ対策としての効果は見られず、マングースはむしろ繁殖を続け、2000年頃には推定1万匹以上にまで増加。農作物への被害や、アマミノクロウサギをはじめとする在来種への脅威が深刻化しました。特にアマミノクロウサギは、マングース導入前の2割程度にまで個体数が減少する危機的状況に陥りました。
こうした状況を受け、環境省は2000年に本格的な防除事業を開始。2005年には外来生物法に基づき、マングースを特定外来生物に指定し、捕獲専門集団「奄美マングースバスターズ」を結成しました。最大で約3万個ものわなを島内に設置し、2007年度には日本初のマングース探索犬を導入するなど、徹底的な対策を講じました。その結果、2018年4月以降、捕獲されたマングースはゼロとなり、センサーカメラや探索犬による調査でも生息情報が確認されていません。
今回の根絶宣言は、奄美市で開催された専門家による検討会で、算出された「根絶確率」が99.7%と98.9%と非常に高いことから発表されました。さらに、島民やエコツアーガイドからの目撃情報も得られなかったことが裏付けとなっています。奄美大島ほどの大規模な島で、長期間にわたり定着していた外来種の根絶に成功するのは世界的にも希少な事例であり、希少種保護の観点からも大きな成果です。
この取り組みの成果はすでに現れており、近年ではアマミノクロウサギをセンサーカメラが捉える頻度が増加するなど、在来種の回復傾向が見られます。一方で、沖縄では現在もマングースの防除事業が継続されており、外来種対策の重要性が改めて認識されています。
SNSでは「自然を取り戻す大きな一歩!」「アマミノクロウサギが元気になってほしい」といった感動や期待の声が寄せられており、今回の成功が次世代への環境保護意識を高める契機になることを願う声が広がっています。奄美大島のこの実績は、外来種対策と生態系保護の新たな希望を示すものと言えるでしょう。