2024年夏、千葉市と三重県四日市市を拠点とする企業が、日本の伝統文化「和菓子木型」を3Dデータ化し、そのレプリカを芸術品として販売するサービスを始めました。この取り組みを進めるのは、ハンチャンコーポレート代表の半林義之さん。彼は「伝統の和菓子木型をデータとして保存することで、文化の保護と継承に役立てたい」と意気込んでいます。
和菓子木型は江戸時代に生まれた道具で、特に干菓子の一種「落雁(らくがん)」を作る際に欠かせません。砂糖や水あめを練った材料を木型に詰め込み、魚の鯛や四季折々の草花などの形に成形するのが特徴です。しかし、木型を手彫りで作る職人は現在、全国でも数人しかおらず、伝統の存続が危ぶまれています。
半林さんは2022年10月、それまで勤めていた製造業を辞め起業。日本文化の世界的評価が高いことに気づき、文化の継承に目を向けました。これまで自動車部品のデータ化に携わった経験を活かし、和菓子木型のデータ化という独自の発想にたどり着きました。
このサービスでは、和菓子木型を無償で3Dデータ化し、レプリカを販売。その売上の一部を木型を提供した和菓子屋に還元する仕組みを導入しています。三重県四日市市の和菓子屋「夢菓子工房ことよ」の岡本伸治社長もこの取り組みに賛同し、木型を提供。「和菓子屋の閉業で木型が廃棄されるケースが多いが、伝統が失われる前に何か手を打ちたかった」と話します。また、木型は海外のアンティークショップで見かけることもあり、「芸術品としても価値があるはず」とその可能性を感じています。
SNSでもこのプロジェクトは注目を集め、「和菓子木型が芸術品になるなんて素敵」「伝統文化を未来に残す取り組みを応援したい」といった声が広がっています。3D技術を活用することで、失われかけていた日本の伝統に新たな命を吹き込むこの挑戦は、国内外で文化継承の模範となるでしょう。