みなさん、こんにちは。お財布の事情に直結する話題には敏感な、本メディア編集部です。さて、2019年6月6日現在、私たちの生活に大きく関わる「最低賃金」の議論が熱を帯びているのをご存知でしょうか。政府が、全国平均で時給1000円という目標達成を、これまでの計画よりも前倒ししようと鼻息を荒くしているのです。働く側としては「給料が増える!」と手放しで喜びたいところですが、経済の現場を覗いてみると、そう単純な話でもなさそうなのです。今回は、このニュースの裏側にある複雑な事情を、分かりやすく紐解いていきましょう。
事の発端は、6月下旬に決定される予定の「経済財政運営と改革の基本方針」、通称「骨太の方針」です。これは、政府が今後日本の経済をどう舵取りしていくかを示す、いわば国の設計図のようなものです。ここに「早期に全国平均1000円」という目標が明記される方向で調整が進んでいるのです。現状、日本の最低賃金はイギリスやドイツ、フランスといった欧州先進国の約7割程度にとどまっており、国際的に見ても低い水準にあることは間違いありません。労働者の生活を守るため、引き上げが必要だという議論自体は、大いに頷けるものです。
悲鳴を上げる中小企業と、SNSでのリアルな声
しかし、この「スピードアップ」に対して、現場からは待ったの声が上がっています。特に深刻なのが中小企業です。日本商工会議所は、政府の前のめりな姿勢に対し、実態を無視した「数字ありき」の引き上げだと強く反発しています。実際、2018年の中小企業の賃上げ率は1.4%にとどまっており、政府が掲げてきた「年3%」のペースについていくのがやっと、あるいは限界という企業も少なくありません。そこに米中貿易摩擦の激化による景気の先行き不安が重なり、経営者たちの表情は曇るばかりです。
ネット上やSNSを覗いてみると、この話題に対する反応は真っ二つに割れています。「時給が上がれば生活が楽になる、もっと上げてほしい」という労働者側の切実な声が溢れる一方で、「これ以上上がったらバイトを雇えなくなる」「近所の馴染みの店が潰れてしまうかもしれない」といった、経営者や店舗存続を憂慮する声も多く見られます。中には「給料が上がっても、その分物価が上がったら意味がないのでは?」という鋭い指摘もあり、単純な歓迎ムード一色ではないことが伝わってきます。
「市場の論理」と「政策の理想」の狭間で
ここで少し専門的な話をしましょう。本来、賃金というのは「市場メカニズム」によって決まるのが原則です。これは、商品を売りたい人と買いたい人のバランスで価格が決まるように、労働力も「働きたい人」と「雇いたい人」の合意で給料が決まるという考え方です。しかし、最低賃金制度は、労働者の生活安定や貧困対策という「政策的な目的」のために、政府が市場に介入して下限を設けるものです。今回の議論で危惧されているのは、この政府の介入が強くなりすぎて、市場の実態とかけ離れてしまうことなのです。
私自身の意見としても、拙速な引き上げには慎重であるべきだと考えます。例えばお隣の韓国では、最低賃金を2年連続で急激に引き上げた結果、耐え切れなくなった自営業者が雇用を減らし、かえって失業者が増えるという事態を招きました。日本が同じ轍を踏まないとは限りません。政府には、単に数字を目標にするだけでなく、それが経済全体にどのような副作用をもたらすのか、冷静なシミュレーションが求められます。「賃金を上げろ」と言うのは簡単ですが、その原資を稼ぐのは民間企業なのですから。
本当に必要なのは「稼ぐ力」の底上げ
結局のところ、私たちが目指すべきは、無理やり賃金を上げることではなく、企業が自然と賃金を上げられるような強い経済を作ることではないでしょうか。そのためには、中小企業自身の「生産性向上」が不可欠です。少ない労力で大きな付加価値を生み出し、しっかりと利益を出せる体質へと変わっていく必要があります。もちろん、企業努力だけに任せるのではなく、政府による規制改革や、働く人のスキルアップ支援といったバックアップも重要になってくるでしょう。
最低賃金の引き上げは、劇薬にもなり得ます。正しく使えば経済の好循環を生みますが、量を間違えれば副作用で体を壊してしまいます。2019年6月現在、私たちはそのさじ加減を問われる重要な局面に立っています。企業が成長し、その果実として賃金が上がり、消費が活発になる。そんな健全なサイクルを目指すために、政府には「1000円」という数字に縛られない、現場を見据えた柔軟な舵取りを期待したいですね。