いよいよ2019年10月に迫った消費税率10%への引き上げ。これまで二度の延期を経てきただけに、「今回もまた延期になるのでは?」と淡い期待を抱いている方も少なくないかもしれません。しかし、政府・与党の動きを見る限り、今回はどうやら「本気」のようです。2019年6月6日、政府は経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」の原案を自民党に提示しました。そこには増税を実行する強い意志が滲み出ています。
今回の「骨太の方針」原案、そして自民党や公明党の参院選公約案には、予定通り増税を行うことが明記される方向で調整が進んでいます。注目すべきは、過去2回の延期時とは全く異なる政府のスタンスです。安倍晋三首相をはじめとする政府首脳の発言には迷いがなく、むしろ増税後の景気対策に全力を注ぐ姿勢が鮮明になっています。もはや「増税するかどうか」を議論する段階は過ぎ、「どう増税を迎えるか」というフェーズに突入していると言えるでしょう。
「判定会議」不在が示す、これまでにない既定路線
過去のパターンを振り返ってみましょう。安倍首相が消費増税を延期した2014年と2016年には、決断の前に必ず「舞台装置」が用意されていました。それは、有識者や専門家を官邸に招いて経済情勢を点検する会議です。たとえば2014年には「点検会合」、2016年には「国際金融経済分析会合」が開かれ、そこでの慎重論をテコにして延期を表明するという流れがありました。
ところが今回は、そのような公式な「判定会議」が一切設けられていません。首相は2019年5月や6月にエコノミストと会食を行っていますが、あくまで非公式な意見交換にとどまっています。過去の延期判断が増税予定の約10ヶ月〜1年前に行われていたことを考えると、実施まで4ヶ月を切った現段階での静けさは、逆に「実行」への確固たるサインと捉えるべきでしょう。民間企業のシステム改修も進む中、今からのちゃぶ台返しは物理的にも困難を極めます。
「リーマン級」がない限り実施? 私たちの生活はどうなる
政府はただ増税を強行するわけではありません。今回の公約案では、増税による消費の冷え込みを防ぐため、「十二分な対策」が強調されています。具体的には、キャッシュレス決済時のポイント還元や、低所得者・子育て世帯向けのプレミアム付き商品券の発行などです。また、公明党が長年訴えてきた「軽減税率」もセットで導入されます。これは飲食料品などの税率を8%に据え置く制度ですが、線引きの複雑さなど現場には戸惑いも予想されます。
SNS上では、こうした政府の動きに対し「ポイント還元とか複雑すぎてついていけない」「結局、増税分が還元されるだけなら増税しなくていいのでは?」「軽減税率のイートイン脱税が話題になりそう」といった、制度の複雑さに対する困惑や、諦めにも似た声が多く上がっています。また、「リーマン・ショック級の事態が起きない限り引き上げる」という首相の言葉に対し、「今の経済状況も十分に厳しい」という悲痛な叫びも見受けられました。
編集者としての私見ですが、今回の増税は「全世代型社会保障」への転換、つまり幼児教育無償化などの財源確保という大義名分があるため、政府としても後には引けない状況なのだと感じます。しかし、複雑怪奇なポイント還元や軽減税率は、消費者だけでなく小売店にも大きな負担を強いることになります。増税そのものの是非もさることながら、その「痛みの和らげ方」が本当に国民生活に寄り添ったものになっているのか、実施までの残り数ヶ月、私たちはその実効性を厳しく注視していく必要があります。