カスタマーハラスメントの実態と課題:企業の対応が追いつかない現状

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東京商工リサーチが実施した2024年の調査で、回答した約5,000社のうち71.5%が「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に特に対策を講じていないことが明らかになりました。カスハラとは、顧客や取引先からの過剰な要求や威圧的な態度を指し、従業員に精神的な負担を与える深刻な問題です。直近1年間でカスハラを経験した企業は約2割、その中で従業員が休職や退職に追い込まれたケースも約1割に達しました。この結果から、安心して働ける職場環境の整備が多くの企業で遅れている現状が浮き彫りとなりました。

企業規模別では、大企業の54.5%、中小企業の73.4%が「対策を講じていない」と回答しています。特に中小企業では「費用や人材の面で余裕がない」という声が多く聞かれます。また、「取引先に注意するのは困難」という認識が対策を妨げる一因となっています。

一方で、対策を講じている企業では「従業員向けの研修」を行うケースが12.4%と最も多く、次いで「相談窓口の設置」「対応方針の策定」「録音・録画機器の設置」といった具体的な取り組みが挙げられています。しかし、これらはまだ一部の企業に限られ、全体の対策にはほど遠い状況です。

カスハラが多発している業種としては、宿泊業や飲食業など、個人客と接する機会が多い分野が挙げられます。具体的な事例としては、「攻撃的・威圧的な口調でのクレーム」や「長時間にわたる対応を強いられた」といった被害が報告されています。こうした状況は、従業員の精神的な負担だけでなく、企業にとっても大きな損失をもたらします。

東京商工リサーチは「悪質なクレームが担当者を追い詰め、企業全体の損失を引き起こす事態が増えている」と指摘しています。これを受け、厚生労働省は企業向けのカスハラ対策マニュアルをホームページで公開し、具体的な対応方法を提示するなど、国としても対策を進めています。

SNS上では、「カスハラを放置している職場では働きたくない」「顧客と従業員の関係を見直すべき」といった意見が広がっており、企業に求められる対応が改めて注目されています。カスハラ問題への対応は、従業員の安心と信頼を守るだけでなく、企業の持続可能性を確保するためにも重要な課題となるでしょう。

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