幻の名作が甦る:アルファミュージックの再始動とシティポップの新たな展開

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2024年9月、伝説的なレコードレーベル「アルファミュージック」が再始動し、幻のアルバムとして知られていたリンダ・キャリエールの「リンダ・キャリエール」が約50年の時を経てリリースされました。この作品は1977年に制作されながらも、発売が中止されていたものです。細野晴臣をプロデューサーに迎え、山下達郎、矢野顕子、吉田美奈子といった気鋭のアーティストが楽曲を提供したアルバムは、今なお新鮮な響きを持つ名作です。

リンダ・キャリエールは、フランスやスペイン、アフリカにルーツを持つアメリカ人女性シンガーで、彼女のエキゾチックな歌声と洗練されたアレンジが融合した本作は、都会的でありながらどこか素朴さを感じさせる不思議な魅力にあふれています。しかし、当時のアメリカ提携会社からの評価が芳しくなく、完成目前でリリースが断念されました。その後、アルファミュージック自体も1990年代にレコード制作から撤退し、このアルバムは長らく日の目を見ないままでした。

2019年にソニーグループ傘下で再スタートを切ったアルファミュージックは、創立55周年を迎えた2024年、リンダの作品の復活を実現しました。本作のリリースは、昨今の日本発シティポップの世界的なブームが追い風となり、業界内外からのリクエストが実を結んだ結果でもあります。現社長の見上チャールズ一裕氏は、長らく所在不明だったリンダ本人をSNSで発見したことで企画が一気に進んだと語っています。

アルバムの中で山下達郎が手がけた楽曲は、きらびやかなシンセサイザーと管楽器が都会の輝きを演出。一方で、細野晴臣が展開したエキゾチックな要素は、彼の「トロピカル三部作」の最終作「はらいそ」(1978年)の前年に録音されたこともあり、無国籍な音楽観が反映されています。このアルバムがリリースされなかったことで、翌年に坂本龍一や高橋幸宏とともに始まったYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の誕生につながったことも興味深いエピソードです。

さらに、リンダのリリースに先立って、クニモンド瀧口によるプロジェクト「RYUSENKEI」の新作「イリュージョン」も発表されました。現代版シティポップとして、過去のサウンドをただなぞるのではなく、独自のフィルターで整理し再構築した音楽を提示しています。「シティポップのブームそのものにはあまり興味はない」と語る瀧口氏の言葉からも、単なる懐古主義に終わらない挑戦が感じられます。

SNSでは、「幻のアルバムが聴ける日が来るなんて!」「今の音楽シーンに新たな風を吹き込んでほしい」といった反響が広がっています。創設者の村井邦彦氏も「長い歴史を受け継ぎ、しっかりと未来に向かってほしい」と期待を寄せています。アルファミュージックが再び輝きを取り戻し、新旧の名作を世界に届ける姿に、これからも目が離せません。

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