政府は2026年度に本格導入予定の温暖化ガス排出量取引制度において、削減目標を達成できなかった企業が他社から排出枠を購入しなかった場合に課徴金を課す方針を固めました。この措置により、温暖化対策に消極的な企業に事実上の罰則を設け、制度の実効性を高める狙いです。政府はこの内容を「GX推進法」の改正案に盛り込み、2025年の通常国会への提出を目指しています。
排出量取引制度とは、温暖化ガスに対して価格を設定する「カーボンプライシング」の一環です。具体的には、各企業に温暖化ガスの排出量の上限を設け、目標を達成できなかった企業は、削減に成功した企業から余剰分の排出枠を購入する仕組みです。この仕組みにより、削減努力が不十分な企業には経済的な負担が生じるため、温暖化ガス削減のインセンティブを高める効果が期待されています。
現在、2023年度から試験的に任意参加型の排出量取引制度が実施されていますが、法的拘束力がないため業界ごとに参加率にばらつきがあり、全体の効果には限界があります。これに対し、欧州連合(EU)ではすでに強制参加型の排出量取引制度が導入されており、1トンあたり100ユーロ(約15,000円)の価格が設定されています。日本でもCO2排出1トンあたりの価格を法律で定める案が有力視されていますが、その金額設定は今後の議論で決定される見通しです。
新制度の対象は、電力や鉄鋼など温暖化ガスの排出規模が大きい大企業が中心です。企業が削減目標を達成できなければ、排出枠を購入するか課徴金を支払うことが義務化されるため、温暖化対策への取り組みが一層求められるでしょう。
SNSでは、「環境問題への取り組みを後押しする良い動き」「罰則だけでなく支援策も必要」といった意見が広がっています。一方で、中小企業への影響や課徴金の適正額について慎重な議論を求める声も多く見られます。
この制度は、企業の温暖化ガス削減努力を促進すると同時に、持続可能な社会を実現するための重要な一歩です。年内には課徴金を含む制度の大枠がまとめられる予定であり、日本が欧州に続くカーボンプライシング先進国となるための試金石と言えるでしょう。