SNSが熱戦を演出:自民党総裁選、党員票争奪戦の新たな戦略

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2024年の自民党総裁選に向けて、各候補が党員票を獲得するためにSNSを駆使した戦略を展開しています。今回の総裁選は派閥の縛りが弱まったことで、10人以上の立候補が見込まれる混戦模様となっています。国会議員票の分散が予想される中、同数の票数を持つ党員・党友票の重要性がかつてないほど高まっています。候補者たちは、ネット上の発信を主戦場に、短期間で名前や政策を浸透させるべく奮闘しています。

小林鷹之前経済安全保障相は、8月20日にYouTubeで生配信を開始。「全国的には知名度ゼロ」と自ら語り、視聴者の質問にリアルタイムで答える形で政策や経歴をアピールしています。配信中にはビール片手に「素の自分」を演出し、政策論だけでなく親近感を持たせる工夫も凝らしています。この手法は、7月の東京都知事選で2位に躍進した石丸伸二氏が取り入れたもので、若年層や無党派層への訴求力が高いとされています。小林氏の配信には石丸氏との対談を求める声も多く、「石丸支持層」を取り込む動きが見られます。

一方、小泉進次郎元環境相は8月30日に新たにYouTubeチャンネルを開設。「政治への信頼回復」をテーマに掲げ、ショート動画を活用して若年層にアプローチしています。自身のプライベートなエピソードや政策を交えた投稿を行い、中学時代に父で元首相の小泉純一郎氏が三者面談に来た思い出なども語っています。純一郎氏が2001年の総裁選で「自民党をぶっ壊す」と唱え、圧倒的な支持を得たストーリーを重ね、関心を引き寄せる狙いが感じられます。

河野太郎デジタル相は、フォロワー数が約255万人と圧倒的な影響力を持つX(旧Twitter)を活用。「河野太郎総理で実現したいこと」と題して、被選挙権年齢の引き下げやオンライン投票の導入といった政策を次々と投稿し、事実上の公約を打ち出しています。政策発表会後には、寄せられる質問や意見に答える動画の公開も予定しており、SNSを通じて双方向のコミュニケーションを重視しています。

これまでの総裁選では、派閥の支援を受けた候補者が豊富な資金を背景にビラやパンフレットを一斉郵送することが一般的でした。しかし今回は、選挙管理委員会が党員への一斉郵送を自粛するよう求めたこともあり、SNSが主役の舞台に躍り出ています。一方で、組織票や直接対話を重視する「どぶ板選挙」も根強く、一部の候補者は台風による足止め中も有力支持者への電話連絡を続けています。

SNSの活用は、派閥解散後の新しい選挙スタイルとして注目を集めています。SNS上では「政治がより身近に感じられる」「候補者の人間味が伝わる」といったポジティブな声が広がる一方、ネット戦略だけでは見えにくい政策の中身への疑問も寄せられています。新たな戦略と伝統的な手法をどう融合させるかが、今後の選挙戦の鍵となるでしょう。

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