テレグラム創業者の逮捕が引き起こす波紋:自由と中立をめぐる攻防

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通信アプリ「テレグラム」の創業者でありCEOのパベル・ドゥーロフ氏が、2024年8月24日にフランス当局によって逮捕され、その後5億円相当の保釈金を条件に保釈されました。この逮捕は、約10億人が利用するプラットフォーム上での違法取引を可能にした共謀容疑に基づくもので、捜査が本格化したことで国際的な波紋を広げています。

フランス政府は「捜査は政治的な意図ではなく、サイバー犯罪対策の一環」と説明していますが、ロシア側は強く反発しています。ラブロフ外相は「フランスとの外交関係は過去最悪の状態」と発言し、テレグラムをめぐる問題が両国間の緊張を高めています。さらに、ロシアのウォロジン下院議長は「テレグラムはアメリカの影響を受けない数少ない巨大プラットフォームの一つ」と指摘し、今回の逮捕をフランスを介したアメリカの政治的操作とみなしています。

テレグラムは2013年にドゥーロフ氏によって設立され、高い暗号化技術により、当初は反体制派や若者の支持を集めました。その後、利用者は旧ソ連圏を中心に急拡大し、現在では世界的に影響力を持つプラットフォームとなっています。一方で、ロシアでは2018年に通信内容へのアクセスを拒否したことで接続規制を受けましたが、その後事実上の容認に転じました。この背景には、テレグラムを情報戦のツールとして活用するというロシア政府の戦略も含まれていると考えられます。

プラットフォーム運営の方針として、テレグラムは投稿内容の監視や削除を最低限に抑えており、この姿勢が偽情報やプロパガンダの拡散を助長しているとの批判もあります。実際、ロシア政府関係者がテレグラムを活用して情報発信を行っており、このアプリがロシアのプロパガンダを支える重要なツールとなっています。

フランス政府もテレグラムの影響力を重視しており、2018年にはマクロン大統領がドゥーロフ氏にパリへの本社移転を要請し、フランス国籍を付与しました。この背景には、テレグラムを自国の経済的・政治的な戦略に取り込みたいという意図があると見られます。しかし、ドゥーロフ氏はどの国の影響下にも入らない姿勢を貫き、現在テレグラムの本拠地をUAE(アラブ首長国連邦)のドバイに移しています。

今回の逮捕劇を受け、SNSでは「自由を守るプラットフォームの重要性」や「情報管理と規制のバランス」について議論が広がっています。一方で、テレグラムが自由で中立な場であり続けることの難しさも浮き彫りになっています。10億人もの利用者を抱えるテレグラムは、今後さらに国際的な監視や規制の対象となる可能性が高いでしょう。その中で、ドゥーロフ氏が掲げる「自由で中立なプラットフォーム」の理念をどこまで守り抜けるかが問われています。

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